企業インタビュー
2016年10月19日
横浜で人気のカジュアルイタリアン「トラットリア フランコ」。その姉妹店として、連日多くのファンで賑わうのが、今回ご紹介する「オステリア イル フオッコ」だ。
「オステリア」というのは居酒屋、食堂など、いろいろな訳し方のある業態で、総じて“気取らないレストラン”と捉えていい。キッチンに薪窯はあるが、“イタリアン”と聞いてイメージする、ピザメニューは見当たらない。
同店で提供しているのは、イタリアの中南部の薪窯料理。その地方では日頃から親しまれている郷土料理だが、日本人にとってはややマニアックな印象を受ける。なぜイタリアの郷土料理専門店が多くのファンを惹きつけるのか。同店のシェフ・田中威平さんにお話を伺った。
横浜駅西口を出て繁華街を抜け、住宅街との境目あたりに「オステリア イル フオッコ」はある。歩いて10分弱、目的もなく歩くには少し遠い距離だ。
「お客様の層は、店の近隣で働いている方や、家に帰る途中で立ち寄っていただく方が多いです。また近所のご家族連れの方もいらっしゃいます。いわゆる地域密着型の店です」
実はこの『地域密着』というところに、同店がモデルとする食堂スタイルの原点がある。
「イタリアの中南部、ブーツの形をしたイタリア国土の『カカト部分』に、プーリア州や、バジリカータ州という地方があります。その地域のお肉屋さんでは、ズラっと肉を並べている売場の隣に、小さな薪窯が設置されていて、そこで焼いた料理を出しています。そんな食事もできる肉屋兼食堂が、街に何軒もあるのです」
料理の中でも人気の
ランプレドット(牛モツの揚げ焼煮込み)
提供されるメニュー自体は、どの店でもほぼ同じだが、店ごとの味は少しずつ異なるという。お客さんは地元の人ばかりで、まさに地域密着型。同店の薪窯を使った料理や内装などの基本コンセプトは、ここから来ているそうだ。
「現地で使われている食材は地産地消で、それがその街の文化であり、誇りとなっています。うちの店では、そうしたイタリアの郷土料理をアレンジせずに、そのまま再現したいと思っています。なぜなら、結局はそれがシンプルに美味しいですからね」
イタリア料理の基本は、マンマ(=お母さん)の味と言われる。田中さんはそこに日本とイタリアの、食の共通点を見出している。
「日本にもおふくろの味という言葉がありますが、イタリアの郷土料理にも、食べたときに、グッと『心』に来るものがあるんですよね」
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