企業インタビュー
2016年07月15日
予約の取れないお店として有名な大阪の焼鳥屋『熊の焼鳥』が、焼鳥店としては関西初の会員制を導入し、話題を呼んでいる。会員数はすでに3,000人を超えているという。
一般的に会員化というと、新規来店の間口を狭め、集客力を弱めることに繋がりそうだが、あえて会員制に踏み切ったのはなぜなのか。代表の熊脇稔康さんを訪ね、会員制のメリットと独自の店づくりについて伺った。
熊脇氏が飲食の道に入ったのは、18歳の時。以来20年間、飲食の現場に立ち続けている。
「最初の店は、フランチャイズの焼鳥屋でしたが、親戚が焼鳥店を立ち上げたのをきっかけに、そちらの店を手伝い始めました。その店は9年間で6店舗まで拡大しましたが、店の経営について色々と意見の違いが出てきて、辞めました」
当時、熊脇氏の中で『オーナーとして店舗を運営したい』という思いが高まっていたという。
「“これまでの経験もあるし、焼鳥屋なら何とかなるだろう”と、楽観的な気持ちで始めたのが『熊の焼鳥』です。今のような会員制でもないごく普通の焼鳥屋でした」
新しい店は順調な滑り出しとは言えず、店を開けてもお客のほとんどが知人。来客数が1日10人を下回る日もあった。
「最初はメニューも結構な数を用意していたのです。ただ準備が多い分食材のロスも多く、ある時からコース料理をおすすめするようになりました。コースなら予約がメインですし、仕入れ量も比較的読みやすくなるからです。そのうち『熊の焼鳥』といえば『コース』というのが定番化したので、それならいっそコース料理だけで勝負しようと決めました」
コース料理の店にすると決めてからは、鶏の焼き方、ボリューム、出すタイミングなどを何度も修正して練り上げる日々が続いた。そんな中で日々の改善のヒントは、常に客席の中にあったという。
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