企業インタビュー
2016年07月06日
川口洋(かわぐちよう)…1969年、兵庫県生まれ。神戸大学法学部卒業後、1992年4月に外務省入省。アラビア語の専門家として、在シリア日本国大使館、在オマーン大使館と、約5年半にわたり中東諸国で勤務する。帰国後、2003年に外務省を退職し、飲食業界へ転身。タイ料理店『ティーヌン』を運営する、株式会社スパイスロード他を経て、2004年に独立し、株式会社SUU・SUU・CHAIYOO(スースーチャイヨー)を設立する。
外務省員から、タイ料理チェーンの経営者へ――。そんな経歴を持つ川口社長が運営するのが、『クルン・サイアム』を主軸とするタイ料理専門店の4業態だ。現在、都内に13店舗を構え、アットホームな雰囲気とタイ人シェフによる本格料理で、若い女性を中心に注目を集めている。
異色の経歴と、独特な経営理念。飲食業界でひときわ異彩を放つ川口社長に、起業までの道のりと成功の秘訣、そして今後の展望について伺った。
【Q】なぜ、外務省を退職して、タイ料理専門店の経営者になろうと決断されたのでしょう?
そもそも、外務省に勤め始めたのは、『海外の人と仕事がしてみたい』というシンプルな理由からでした。また、当初より漠然と『いつかは自分で商売をして自分の力を試したい』とも思っていました。
なぜ、飲食業なのかといえば、人をもてなすことが好きだったからです。外務省時代に中東のシリアとオマーンに6年近く赴任していたのですが、毎週のように、アラブ人や欧米人などの外交官を自宅に招いて、自由討論会のようなものを開いていました。
話題は「中東和平」や「資源問題」など様々でしたが、私はというと、討論への参加はそこそこに、ホストとして討論後に出す軽食の内容や出すタイミング、その時にかける音楽の種類など、そんなことばかり考えていました(笑)。
私は、自分自身が率先して場を盛り上げるタイプではありませんが、皆が料理を囲んでワイワイ楽しむのを、傍から見ているのが好きです。そんな“おもてなし好き”が高じて、最終的に飲食業を始めてしまいました(笑)。
【Q】では、タイ料理で勝負しようと考えたのはなぜでしょう?
『勝負』という気持ちは全くなくて、自分が好きなタイ料理を他の人にも食べてもらいたい、そして美味しいと思ってもらいたいという気持ちで始めて、今もその気持ちのまま続けています。
もともとタイという国には何かと縁があって、オマーンに赴任していた頃、行きつけの和食屋の料理人がタイ人だったり、現地のタイ大使館の外交官ともプライベートで仲が良かったり。とにかくタイ人の気性が好きなのです。素直で明るい。誤解を恐れずに言えば、子供のように、今一瞬一瞬の刹那を大事に生きているところが好きです。もちろん出会った人との相性も良かったのだと思います。
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