業界動向
2016年05月27日
スキレットと呼ばれる鋳鉄(ちゅうてつ)製のフライパンを使った料理写真が、InstagramをはじめtwitterやFacebookなどで広く投稿されている。スキレット自体は武骨な見た目でありながら、料理にシズル感を与えて写真映えさせるとSNSユーザーの間で受けているのだ。最近ではカフェやバルの他、和風居酒屋やビアガーデンのメニューでもスキレットを使ったメニューが多くなっている。
そこで今回は、自身のブログやクックパッド、講演のほか、著書『ロッジ発 スキレット絶品レシピ』などでスキレットの魅力を発信する料理家・岸田夕子さんに、スキレットのイロハから飲食店での活用法までを聞いた。
スキレットは、パンケーキ、ダッチベイビー、アヒージョなど、流行りのメニューとの相性が良いことから、数年前からカフェなどで使われるようになった。2015年頃になるとこのメニュー写真がInstagram(※)に投稿されていき、オシャレでかわいい“カフェごはん”を象徴するアイテムとして、スキレットのブームに火が付いた。近年のSNSユーザーは写真の見栄えを一層重視する傾向にあり、スキレットはまさにその要望に応えた調理器具といえる。
2015年中頃になると、テレビで度々取り上げられるようになり、SNSを飛び出し一般にも知れ渡っていった。今や家庭料理でも使える調理器具として、様々なサイズのスキレットが市販されている。
※Instagram(インスタグラム)
撮影した画像を加工・共有するスマホアプリ。2010年にアメリカで登場し、2015年頃から日本で急速に普及した。
アメリカ・シカゴに16年間在住し、今や日本におけるスキレット料理の第一人者として知られている岸田さん。まずは、スキレットとは何なのか、特徴や魅力について話を聞いた。
岸田夕子(きしだ ゆうこ)さん
料理家、「レシピブログ」オフィシャルパート
ナー。アメリカ・シカゴ在住中の2006年から
クックパッドにオリジナルレシピを公開し、
2008年に個人ブログを開設。多くのメディ
アに登場する傍ら、自身でもレシピ本を上
梓し人気を集めている。
「スキレットは、一言でいうと鋳鉄製のフライパンのことです。アメリカでは家庭料理に欠かせない調理器具として一家にひとつが当たり前です」
アメリカのキッチンでは100年以上も前から使われているというスキレット。その最大の魅力は、鋳鉄製ならではの高い熱効率だという。
「温まりにくく冷めにくい。つまり、急激な温度変化を起こさないことが、調理器具として優れている点です。一度しっかり熱を加えれば、厚みのある鉄板が熱を逃さず、じっくり均一に火が通ります。付きっきりで細かな火加減の調節をする必要がないので、家庭だけでなく忙しい料理人の方にもピッタリですよ」
そんな岸田さんのお話をはじめ、スキレットを愛用する人の投稿記事でもよく出てくるのが、フタの重要性だ。フタがあると無いとでは、仕上がりにも差が出るという。
「もちろんフライパンとしてフタ無しでも使えますが、フタがあれば煮込み料理などにも使えます。鋳鉄製のフタは重みがあるので密閉性が高く、圧力鍋のような効果もあり時短になります。また、フタとスキレットの間に水の膜が出来て蒸気を逃がさないウォーターシール効果もあり、野菜の蒸し焼きなども水なしで上手に仕上がります」
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