ハラール食ビジネスの第一歩

大掛かりな工事は不要-宿泊施設ができるムスリム対応

中村直子(ジャパンハラールコープ代表)  2014年11月28日

今回はムスリムの方をお迎えする宿泊施設が出来る対応についてご紹介します。

日本を訪れるムスリム(イスラム教徒)の多くはホテル等、民間の宿泊施設を利用します。客室がプライベート空間として快適であることはもちろん大切です。しかし、それ以上にホテルでの朝食は旅先で一日のスタートをきるに欠かせない重要なポイントになります。

しかし2014年11月現在、宿泊施設のムスリム対応は、まだあまり進んでいるとは言い難いようです。今年お迎えしたゲストの何組かはホテルが出す食事が食べられず、私がお弁当を作り届けていましたし、今までにも炊飯器を部屋に持ち込みご飯を炊いて食べていたという方がいました。2020年の東京オリンピック開催に向けて、宿泊施設や飲食店でのムスリム対応はますます求められることが予想されますので、皆様も今から少しずつ対応をしてみてはいかがでしょうか。

ホテルができるムスリム向けおもてなし

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(1)客室の天井に貼られたキブラマーク
の例(2)客室のクローゼットに礼拝用
マットが用意されている例

私のところに寄せられるホテルの対応の相談の中に、「集団で礼拝するための部屋を作る事が出来ない」「身を清めるための設備を設置する事が難しい」などといったものがあります。しかし、自分の部屋でも礼拝を済ます事ができるので、必ずしもムスリム宿泊客専用の設備は必要ではありません。

すぐにできる客室内でのムスリム向けの対応として

(1)天井や引き出しの中などに、イスラムの礼拝をする方角を示す目印・キブラマークを貼る
(2)礼拝時に必要となる礼拝マットの貸し出し

等があります。最初から大掛かりに考えず、できることから少しずつ始めてみてください。

ホテル内の飲食店ができるムスリム向けの対応

飲食施設を持つホテルでの対応はどうでしょうか。実は飲食施設のムスリム対応が、宿泊施設ができる対応の中で最も難しいとされている部分であり、対応ができれば最も喜ばれる部分でもあります。なぜなら朝食はホテルで済ませ外出するのが効率的であり、旅の楽しみのひとつでもある夕食も、ホテルで済ませることができれば、ムスリム向けの飲食店を探しまわることもありません。また、礼拝の時間を気にしながら食事をとる気苦労もなくなります。ムスリムにとってはホテルのレストランが利用できる=安心して食事をする場所が身近にあるということなのです。

最も望ましい対応は、食材も含め、ハラール(イスラム法で合法とされるもの)とハラーム(イスラム法で非合法とされるもの)が混じる事がないよう、ハラール専用の厨房を作ることです。本来は材料だけでなく、調理人も同時に両方の作業に携わる事はできず、専任者が必要なのですが、現場では無理に近いといえます。

では対応が難しいとされる中で、飲食施設を持つホテルはどのような対応ができるでしょうか。朝食などのビュッフェスタイルを例に、ホテル内の飲食店が出来る事をご紹介します。

1.ハラールメニューを提供する

ハラールの材料や調味料を使って調理し、その調理に使う調理器具や盛り付ける器もハラール専用のものを用意します。ハラールメニューとして提供する場合、料理に使用した材料がわかるような表示をするとより安心感を与えます。

2.ハラールメニューは離して置く

ハラールメニューをテーブルに配置する時に、ハラールメニューとハラームのメニューは場所を離しておきます。なぜなら、イスラム法で許されていない材料のコンタミネーション(異物混入)を避けるためにそのような配慮が必要となります。

3.ハラールメニュー用の食器

個々に使用するお皿やカトラリーは、ムスリム用のものを用意しましょう。ハラールメニュー用の取り分け用菜箸やトングなども色分けされたものを使用するなど、目で見てわかるように区別すれば、ムスリムにより安心感を与えることができます。

4.席の配置に注意する

普段日本で生活していては気が付きにくいことですが、中東からのムスリムのゲストでは家族以外の男女が同じテーブルに着く事ができません。その場合は、女性だけの席を用意したり、その家族だけ他のお客様と区画を分けて案内したりと配慮が必要です。イスラム圏からの観光地No.1の国であるマレーシアの首都クアラルンプールでは、ホテルのレストランで当たり前のようにこれらの配慮が行われています。行かれる機会があれば参考にしてみてください。

ハラール対応の専門機関と二人三脚で対応を

飲食店のハラール認証取得につきましては、「認証をとることは非常に難しい」と言っても過言ではありません。マレーシアの公的認証機関であるJAKIMは、製品のハラール認証を他国に出しても、宿泊施設や飲食店などの施設に認証を出すことはしないと明言しています。非イスラム国ではアルコール提供が飲食業の売り上げの多くを占める事や、豚由来の成分を含む調味料を多用している事から、施設が認証を取得する事は難しいと見なしているためです。

そこで私がお勧めするのは、日本国内の認証団体にハラール性がどこまであるかを判断してもらい、そのレベルに応じた推薦状や対応ランクを示すマークの発行を受け、店頭に掲示することです。ただし製品に付くハラール認証と同じで、専門知識を持たないホテルや飲食店が自己判断でハラールを表示することは避けるべきです。ホテルや飲食店がハラールの推薦状を必要とする場合は、指導とジャッジが必要となりますから、認証団体に相談することをお勧めいたします。

相談費用は認証団体により異なりますし、かかる時間もまちまちです。しっかりとした衛生管理のもと料理を提供しておられる場合は、それほど長い時間を必要とはしないでしょう。またホテルの対応に関しては、礼拝室や身を清める設備などの工事をしないのであれば、規模にもよりますが1日~数日で完了する事が可能です。

もちろんJHCでもマレーシアのペナン州ほか様々な専門機関と連携をとり、製品のハラール認証取得サポートの他、ホテル、飲食店はじめあらゆる業種でのムスリム対応指導ならびに推薦状の発行まで行っていますので、お気軽にご相談ください。非イスラム圏では認証団体等専門機関との二人三脚でムスリム対応をすることがもっとも確実で、ムスリムからの信頼を得る事ができる近道だと思います。

執筆者プロフィール

中村直子(ジャパンハラールコープ代表) 

ジャパンハラールコープ代表。マレーシア人ムスリムと結婚し改宗した日本人ムスリム。
イスラム圏との取引の中、日本のムスリム対応の遅れを痛感し、「ハラール」をキーワードに、セミナーやコンサルティングを通じて日本における具体的なムスリム対応策を広めている。



<ジャパンハラールコープ>
jhclogo日本でハラール啓蒙と認証制度の普及に特化した組織。ハラールビジネスで世界をリードするマレーシアスタンダードの編纂者であるドクトル・アミルッラ・アブドッラ氏を特別顧問に迎え、外食・宿泊業・食品メーカー向けに観光、飲食業等サービス業のハラール支援や、ハラール認証、ハラール基準の教育・普及およびセミナー活動や、ハラール市場向け商品開発コンサルティングならびにサポートを行なっている。
ウェブサイト:http://www.virago.co.jp/jhc/index.html

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