飲食業経営ノウハウ

外食事業者が懸念する食器洗浄機を介した食物アレルゲン混入の実態と対策

今村慎太郎 (NPO法人アレルギーっこパパの会 理事長)  2021年02月22日

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外食でのアレルギー対応において、難易度の高い「調理場でのコンタミネーション対策」は、多くの企業の悩みではないかと思います。コンタミネーション(食物アレルゲンの混入)を完全に防げないために、アレルギー対応に躊躇している企業も多いでしょう。

そこで今回は、調理場でのコンタミネーション対策の参考として、食器洗浄機から食器に卵アレルゲンがどの程度移行するかを調査した研究をご紹介します。ぜひ、アレルギー対策の参考としてください。

食器洗浄機を介して食器に卵アレルゲンは付着するのか?

今回ご紹介する研究は、「外食事業者が懸念するアレルゲン混入要因および食器洗浄機を介した混入実態と対策(東京海洋大学 准教授 小川美香子、助教 小林征洋)」です。

この研究は、普段、親子丼を提供している飲食店において、食器洗浄機を介して食器にどの程度の卵アレルゲンが付着するかを研究したものです。研究概要等を以下に記します。

〇研究目的

飲食店厨房におけるアレルゲンのコンタミネーション要因を分析し、コンタミネーションの有無を検証したうえで、予防策を検討する。

〇実施方法

①外食事業者に、アレルギー対応の現状とコンタミネーションに気を付けているアレルギー原因食品やオペレーションをインタビューした。
②実店舗での拭き取り検査試料を、ELISAとウエスタンブロッティングに供しコンタミネーションの有無を明らかにした。
③ ①、②を踏まえて予防策を検討した。
※②の「ELISA」と「ウエスタンブロッティング」に詳しくない方は、食品表示法で定められた食品のアレルゲン検査と同一のことを行っているとご理解ください。なお、ELISAはスクリーニング検査とも呼ばれ、検査試料のすべてに対して行い、ELISAで検出された試料はウエスタンブロッティング(確認検査と呼ばれています)を実施しています。

※ELISA (Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay) は、試料中に含まれる抗体あるいは抗原の濃度を検出・定量する際に用いられる方法。「酵素結合免疫吸着法」などの訳語があるが定訳はなく、一般に、エライサあるいはエライザと呼ばれる。(出典:Wikipediaより)

※ウエスタンブロッティング (Western blotting; WB) は電気泳動によって分離したタンパク質を膜に転写し、任意のタンパク質に対する抗体でそのタンパク質の存在を検出する手法。(出典:Wikipediaより)

〇検査試料

以下の①~⑥が検査試料です。ランチ営業時間終了後にすべての検査試料を回収し、同一の作業を3日間行っています。

①普段、親子丼の提供に使用され、かつ、食器洗浄機で洗浄、乾燥済みの器をアルカリ洗浄し、乾燥後直ちに綿棒で器内部表面を拭き取り回収した試料
※アルカリ洗浄は、器表面に付着したアレルゲンを除去するために行っています。
② ①の器を、親子丼を提供せずに食器洗浄機で洗浄し、乾燥後、速やかに綿棒で器の内部表面を拭き取り回収した試料(洗浄液を介した移行の確認検査)
③普段、親子丼の提供に使用されている器で親子丼を提供後、食器洗浄機で洗浄し、乾燥後、速やかに綿棒で器内部表面を拭き取りした試料(残留の確認検査)
④食器洗浄機用バスケットの中央にある突起部分5本
⑤食器洗浄機の内部壁面(100平方センチメートル)を綿棒で拭き取り回収した試料
⑥使用後の洗浄液1ml(洗浄液は11:30~14:30のランチ営業中に同一のものを再利用し、乾燥仕上げ用のリンス水は使用していない)


【試料回収した飲食店の客数と親子丼提供数】
1日目:客数178人、親子丼提供数16食
2日目:客数142人、親子丼提供数10食
3日目:客数183人、親子丼提供数20食

◯検査結果

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陽性となったのは、親子丼提供食数の多い3日目の②の5の器、④、⑥の3つでした。なお、「ND」はno dataの意味です。

食器洗浄機後にアルカリ洗浄した器が陽性となっていないことから、アルカリ洗浄した器には、卵アレルゲンが残存していないことが分かります。

注目すべきは、②の5の器から検出された44.7ng/㎠です。②はアルカリ洗浄した器を、親子丼を提供せずに食器洗浄機で洗浄したものです。つまり、食器洗浄機を介して、器に卵アレルゲンが付着したと考えられます。なお、括弧内の15.7μgは器全体の量に換算したものです。あり得ない話ですが、器全てを食べた場合に15.7μgの卵アレルゲンが摂取されるという意味とご理解ください(μ(マイクロ)はm(ミリ)の1000分の1です)。

調理場で扱う食材量と比較すると、極めて微量な量ですが、過去の研究では、卵アレルギー患者100人に1人が24μgで発症し、100万人に1人が33ng(n(ナノ)はμ(マイクロ)の1000分の1です)で発症すると推定される、とされています。

そもそも飲食店に来ている人であれば、極めて微量で発症する人は少ないと考えられますが、世の中には、これくらいの極めて微量でも発症する人も存在するようです。

また、興味深いのは③のすべてから検出されていないことです。③は普段、親子丼の提供に使用されている器で親子丼を提供後に食器洗浄機で洗浄したものです。アルカリ洗浄をせずに、親子丼提供後に食器洗浄機で洗浄したものですが、検出されていません。

その日の客数、食器洗浄機で洗浄する前の器の状態など、様々な条件が重なった上での結果のため、明確なことは言えませんが、「食器洗浄機を使って洗浄したとしても、かなりのアレルゲンは除去することができるが、ごく微量のアレルゲンが付着することもある」ということは言えそうです。

重要なのは顧客とのコミュニケーション

最後に実施方法③で提案されている「予防策」をご紹介します。

事故防止の観点では、顧客とのコミュニケーションが重要となります。外食事業者としては、メニューの原材料を正確に伝えるだけでなく、コンタミネーションのリスクを認識した上でのコミュニケーションやサービスが望まれます。

例えば、調理器具(食器洗浄機)や食器等で、何を共用しているかを顧客に伝えることが考えられるでしょう。また、重要なのは、リスクに対し、どのような対策やオペレーションをしているかを伝えることにあります。

つまりオペレーションの対策に関してまとめると、食物アレルギー対応をする前に器はアルカリ洗浄を行う、顧客の要望に応じて使い捨ての器を提供できるよう用意する、食器洗浄機の洗浄液の交換ルールを、時間(ランチ後、営業終了後など)でなく、使用回数や条件(客数、メニュー提供数など)で見直すなどが挙げられます。また、そもそもどのメニューにどんなアレルゲンが入っているかという情報を管理することも重要でしょう。

上記提案が実際の調理場においては、難しいものであることも理解しつつ、どこにどんなリスクがあるかを知ることで、一つ一つステップアップができると考えられます。今回は食器洗浄機によるコンタミネーションをご紹介しました。ぜひ、対策の参考としてください。

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執筆者プロフィール

今村慎太郎 (NPO法人アレルギーっこパパの会 理事長) 

長女の食物アレルギーをきっかけに、2013年にNPO法人アレルギーっこパパの会を設立し、理事長に就任。「食物アレルギーがある人の安心できる外食は、料理を提供する人の安全からはじまる」を信念に、外食事業者に向けた講演、日本マクドナルドのアレルゲン検索システム構築の際のアドバイス、森永製菓、第一屋製パンとの新規事業立ち上げ、障害者就労支援施設でのアレルギー対応食品製造、100名規模の参加者全員のアレルゲンに対応した外食イベントの開催、約5年間に渡る『HOTERES(週刊ホテルレストラン)』でのコラム連載などを行う傍ら、週に数日、飲食店の現場に入り料理の提供も行っている。
公式サイト:https://www.arepapa.jp/

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