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コレステロールはなぜ「悪者」扱いされてきたのか~「卵は1日1個まで」はもはや昔の話

佐藤 成美(サイエンスライター)  2019年09月25日

1980年代になると、血管壁にとりこまれるLDLは酸化していることなどが示され、アメリカのダニエル・スタインバーグが仮説としてまとめた。酸化変性したLDLコレステロールが動脈の壁に取りこまれて炎症を起こし、動脈硬化を引き起こすというものだ。この仮説に注目が集まり、多くの研究によってその仮説が裏付けられている。

「卵は1日1個まで」は過去の話

こうして「過剰なLDLコレステロールは悪玉」という図式ができた。しかし、コレステロールを含む食ベものの摂取がこの図式と直結しているかというと、そうではないようだ。

「コレステロールの含まれる食べものを食べると血液中のLDLコレステロールの値が高くなる、というのは間違いです。最初は動脈硬化の患者さんに卵やバターなどコレステロールを含む食品には気をつけなさいといった程度のことしか話していなかった。それなのに、伝言ゲームのように話がどんどん広がり、いつのまにか食べたらいけないと変わってしまったんです」と近藤さんは続ける。

コレステロールの代謝に異常をきたすと、高コレステロール血症になる。しかし、コレステロールは生体でほとんど合成されるものであり、食事から摂ったコレステロールが直接コレステロールの代謝に関与するのは2割くらい。食事からのコレステロールの摂取量が多くなっても、生体内でコレステロール合成のバランスを取るので、食事からのコレステロールはほとんど影響ないのだという。

コレステロールの代謝異常には、摂取エネルギーの過剰や運動不足、飲酒などの生活習慣のほうが影響する。さらに、LDLの変性や炎症には、喫煙や高血圧、糖尿病の影響が大きい。

「患者さんには、動脈硬化を予防するためにはまずは食事全体のエネルギーを減らしなさい、と話します。卵は栄養分が豊富で、抗酸化成分が含まれることも知られていますから、食べたほうがいいです。私の臨床医のころの経験では、夜勤明けに卵を食べるか食べないかでその日の調子が変わり、卵を食べると調子がよかったのです。卵は昔から多くの人を飢餓から救った貴重な食品ですからね。だから、栄養が不足しがちな高齢者などは、むしろ卵を食べるほうがいいと思います」と近藤さんは話す。

「それでも気になる方は、脂肪酸の種類に少し気をつけたほうがいいかもしれません」と近藤さんは補足する。動物性の食品に多く含まれる飽和脂肪酸や、マーガリンやショートニングに含まれるトランス脂肪酸が、LDLコレステロールを上昇させることが知られている。また、イワシやサバなどの青魚に多く含まれるn-3系不飽和脂肪酸が動脈硬化を防ぐことは古くから知られているし、近年の研究からは食物繊維や植物ステロールの血中コレステロールを低下させる作用も期待されている。

「卵は1日1個まで」といわれたのは過去の話だ。動脈硬化を予防するなら特定の食品を控えるのではなく、食事全体を見直そう。当たり前のようだが、結局いろんなものをバランスよく食べ、喫煙をやめ、適度に運動をする。健康はこれに尽きるようだ。

執筆者プロフィール

佐藤 成美(サイエンスライター) 

佐藤 成美(さとうなるみ) サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「おいしさ」の科学』(講談社ブルーバックス)『お酒の科学』(日刊工業新聞社)など多数。

<記事提供:食の研究所
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