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コレステロールはなぜ「悪者」扱いされてきたのか~「卵は1日1個まで」はもはや昔の話

佐藤 成美(サイエンスライター)  2019年09月25日

一方、細胞内で過剰になったコレステロールは肝臓に戻されるが、やはりそのままでは運べないのでリポタンパク質との複合体をつくる。これらの仕組みで生体内のコレステロールの濃度は保たれているのである。

なお、小腸で吸収した食事由来の中性脂肪などの脂質も肝臓に運ばれる。もちろんこれらも水に溶けないので、リポタンパク質との複合体がつくられる。

「悪玉」を追うと、酸化LDLコレステロールにたどり着く

リポタンパク質にはキロミクロン、VLDL(超低密度リポタンパク質)、LDL(低密度リポタンパク質)、HDL(高密度リポタンパク質)などの種類がある。

これらリポタンパク質のうち、VLDLは肝臓で合成された中性脂肪をコレステロールなどともに脂肪組織に運ぶ。そして中性脂肪を放出したVLDLが、LDLに変換される。つまりLDLは、中性脂肪が放出されたため、相対的にコレステロールの割合が多い複合体ということだ。

このLDLが、コレステロールを必要とする末梢組織にコレステロールを運ぶ。一方、過剰なコレステロールを回収するのはHDLだ。

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LDLは肝臓でつくられたコレステロールを全身の抹消に運ぶ。HDLは過剰なコレステロールを肝臓へと回収する。

血液中のコレステロールは、よく「悪玉」と「善玉」に分けて認識される。LDLとコレステロールの複合体であるLDLコレステロールは悪玉で、HDLコレステロールは善玉とよばれる。LDLコレステロールは動脈硬化やそれによる虚血性心疾患と関わりがあることが知られ、この値が高いと動脈硬化が進むと説明される。

「コレステロールが動脈硬化と関わりがあると言われるようになったのは、100年以上も前のことです」と、脂質の代謝を研究する東洋大学教授の近藤和雄さんは話す。1910年には、ドイツのアドルフ・ウィンダウスがヒトの大動脈プラークには健常者の25倍以上のコレステロールを含むと報告した。プラークとは、動脈硬化が進むと血管壁に形成される異常組織のことだ。その後、1913年にロシアのニコライ・アニチコフが、ウサギにコレステロールを含む餌を食べさせると、ウサギが動脈硬化になったと報告した。

「ただし、そのころは血液中のリポタンパク質の分析は難しく、その実態は分かっていませんでしたから、動脈硬化の原因はコレステロールとはいえませんでした。コレステロールが身近になり、善玉とか悪玉といった言葉がよく知られるようになったのは1970年代ぐらいのことかと思います。コレステロールの分析ができるようになってからでしょうか」(近藤さん)

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動脈硬化症と合併して生じることのある
冠動脈の狭窄(矢印の先の部分)。
心筋梗塞をもたらすことも。

1950年代にアメリカのジョン・ゴフマンが、超遠心分離という方法で血漿中のリポタンパク質をLDLとHDLに分けることに成功した。

これがきっかけで、1970年代にはアメリカのリチャード・ハーベルらにより沈殿法による簡便なコレステロールの分析法が開発され、健康診断に血中コレステロール値が取り入れられることになった。また、1970年に7カ国で行われた疫学調査の結果が報告され、過剰な血中コレステロールと動脈硬化の関係が決定づけられた。

執筆者プロフィール

佐藤 成美(サイエンスライター) 

佐藤 成美(さとうなるみ) サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「おいしさ」の科学』(講談社ブルーバックス)『お酒の科学』(日刊工業新聞社)など多数。

<記事提供:食の研究所
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