食の研究所
佐藤 成美(サイエンスライター) 2019年09月25日
健康のため、血中コレステロール値のことを気にしている人も多いことだろう。コレステロールは心筋梗塞などにもつながる動脈硬化のリスクを高めることがよく知られ、「悪者」というイメージが広く定着している。では、なぜコレステロールは「悪者」になったのだろうか。そして、コレステロールと食事はどう関連するのだろうか。
先日、食事をしたとき、知人が「コレステロールが気になる」と、卵焼きを残そうとした。医者からも「卵を食べすぎないように」と言われたという。
かつては「卵は1日1個まで」とか、「イカやタコは食べすぎるな」とよくいわれたものだった。しかし、いまでは、このようなコレステロールを多く含む食品を食べても血中コレステロール値には影響がないとされている。厚生労働省は2015年に日本人の食事摂取基準からコレステロールの上限値を撤廃した。とはいえ、「コレステロールの高い食品を食べすぎるな」という考えは、いまだ多くの人に浸透しているようだ。
コレステロールは脂質の一種である。脂質は水に溶けにくく、有機溶媒に溶けやすい物質と定義される。生体内の主な脂質は中性脂肪、リン脂質、脂肪酸、そしてコレステロールなどと種類も多く、それぞれ重要なはたらきをしている。
たとえば、中性脂肪は効率のよいエネルギー源として、また、リン脂質やコレステロールは細胞膜の成分として重要である。近年では、脂質メディエーターとよばれる、生理活性物質としての脂質の機能も注目されている。これは生体内の重要な生理作用を担うもので、その代謝異常はアレルギー性疾患や糖尿病など生活習慣病に関与するとされる。
先に述べたように、コレステロールは細胞膜の成分として体中に存在する。細胞膜を安定化させるとともに、細胞内を出入りする水や物質のコントロールに重要な役割を果たしている。また、消化を助ける胆汁酸やステロイドホルモンなどの材料としても欠かせない。
コレステロールは腸粘膜や皮膚、腎臓など体中の組織で合成されるが、その中心は肝臓だ。
肝臓で合成されたコレステロールは、血液によって全身の細胞に運ばれる。しかし、水には溶けないコレステロールは、そのままでは運ぶことができない。そこで、「リポタンパク質」という水にも脂質にもなじみやすい性質のタンパク質と複合体をつくり、運ばれる。
佐藤 成美(さとうなるみ) サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「
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