衛生管理・食中毒対策
2018年12月06日
2018年も大手外食チェーン店が相次いで食中毒事故を起こし、営業停止処分を受けた。11月現在の厚生労働省が公表している速報をみても、全国から届出のあった食中毒事故の半数以上が、飲食店で発生している。
食中毒の予防に努めるのは飲食店の義務だ。だが、もし自店の責任で客に食中毒症状の疑いが出た場合、保健所から立入検査がある。その際、飲食店はどう対応するべきだろうか。東京都内で特に飲食店が多いエリアのひとつである港区の食品衛生を監視指導する、みなと保健所の担当者に話を聞いた。
まずは2018年に起こった主な食中毒による事故を振り返ってみたい。大手チェーンから個店まで幅広く食中毒事故が発生している。企業の規模や業態、取り扱う食材によらず、どんなに衛生管理に注意を払っていても、万が一の事故は起こりえるといえそうだ。
■2018年外食企業で起きた主な食中毒
業態 | 原因と考えられる食品 | 原因物質 | 患者数 | 発生場所 | 行政処分 |
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回転ずし | 生ウニ | 腸炎ビブリオ | 21店舗で寿司を食べた計277人が下痢や嘔吐などの症状を訴えた | 東京都、神奈川県、埼玉県の店舗 | 17店が営業停止 |
ハンバーガー | チェーン本部から納入した食材 調査・検査の結果、現時点においても感染源と感染経路の特定には至っていない | 腸管出血性大腸菌O121 | 長野を始め関東・甲信越地方8都県にある19店舗で28人 | 長野県 | 長野県の2店を3日間の営業停止 |
焼き鳥 | 焼き鳥や唐揚げ、サラダ、ポテトフライなど | カンピロバクター | 4人 | 埼玉県 | 3日間の営業停止 |
和食料理屋 | 牡蠣の塩辛、刺身(サンマ、タコ、タイ)、燻製(サバ、明太子、チーズ、たまご) 等 | ノロウイルス | 2グループ6人のうち4人 | 広島県 | 営業の禁止 |
仕出し日本料理 | 仕出し弁当 | ノロウイルス | 19人が、下痢やおう吐などの症状を訴え、このうち14人が医療機関を受診。 客6人と店の従業員1人の合わせて7人からノロウイルスを検出 | 福岡県 | 2日間の営業停止 |
焼き鳥 | 枝豆&ポテトサラダ,海藻と豆腐のサラダ,串盛り5種(鶏皮,うずら卵,つくね,もも,ぼんじり),えびマヨ,カキフライ,鶏ハム,わらび餅等 | カンピロバクター | 1グループ26名のうち7人が,腹痛,下痢,発熱等を訴え2人の便からカンピロバクターを検出 | 福岡県 | 1日間の営業停止 |
ここからは、飲食店による食中毒事故が疑われた場合を想定する。この場合の食中毒は、体調不良を起こした本人が病院を受診したり、保健所へ食中毒かもしれないという問合せをすることで発覚することが多いという。
食品衛生法では、医師が食中毒やその疑いがあると診断した場合、24時間以内に最寄りの保健所に届け出ることが定められている。病院から連絡をうけた保健所は、ただちに患者への調査を開始すると同時に、食中毒の発生源と疑われる施設への立入調査を行う。
■食中毒発生から行政処分までの流れ
「お客様によっては、体調不良を店舗に申し出ることもあります。その場合飲食店は、まず病院での受診を勧めてください。さらにいつ何を食べたか、いつからどのような症状があるか聞き取りをして、その内容を迷わず保健所にご連絡いただきたいです」
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