法令対策
2018年02月09日
厚生労働省による食品衛生法改正案の中で、食品リコール(回収)の制度見直しが進められている。企業の自主回収の全容を消費者が把握する仕組みにはなっていない現行法を改正し、自治体への報告を義務付ける方針が示された。なぜ今、義務化が必要とされるのか、また、食品リコールはどのように発生し、どのように防げば良いのだろう。2017年後半に公表された回収事例をもとに品目や回収理由を集計し、原因をさぐってみた。その傾向を掴み、事故防止の一助としてほしい。
食品のリコール(回収)は、食品衛生法や食品表示法といった関連法令に基づいて行政から回収命令が下される場合と、食品メーカーなどの製造事業者が自主的に行う、いわゆる自主回収の2種類に分けられる。件数では自主回収の方が法令に基づく回収より圧倒的に多いが、行政が把握できるのは法令に基づく回収のみだ。ただし、自治体によっては条例などで自主回収の報告義務を定めている。消費者が情報を知ることができるのはこの制度による。だが、報告制度を定めている自治体は全体の約8割で、残り2割は報告制度がない。
「食品衛生法改正懇談会取りまとめ(概要)」厚生労働省
つまり法令違反でなくても消費者の健康に悪影響を及ぼす食品事故については、現状では把握できないのだ。
このような背景から、2018年度の通常国会に提出される見込みの改正案では、食品事故による自主回収は各自治体への報告が義務づけられる。国が自治体を通じて事故情報を一元管理・公開する方針が盛り込まれた。報告を怠った場合には罰則が科せられる可能性もある。
では、食品事故はどのように発生しているのだろうか。公表された食品事故情報をもとに、回収対象となった食品類の回収理由をまとめたのが以下のグラフである。
2017年後半(7~12月)に発表された食品事故は526件だった。全体の回収理由をみると、賞味・消費期限の間違いやアレルギー表示欠落といった、表示に関する理由での回収が半数を超えている。食品事故として報道に大きく取り上げられる傾向にある品質不良は全体の約3割、異物混入は1割だ。
最も回収が多かった食品分類は菓子類で、全体の約3割にのぼった。次に多かったのは調理食品だが、その他の加工食品や生鮮品などの回収件数はさほど大きな開きはみられない。
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