食の研究所

おしりの拭き方から考える「冬の食中毒」対策~食品従事者も消費者も“そのトイレ”にご注意を

小暮 実(食品衛生アドバイザー)  2017年12月25日

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「食中毒は夏場が本番!」と思いきや、近年は冬場の対策が大切である。というのも、食中毒事件数の3分の1、また食中毒患者の半数以上がノロウイルスによるものであり、その発生が11月から翌年3月にかけての冬場に集中するからである(参考)。食品従事者にとって、冬場はノロウイルスとの闘いの時期でもある。

月別のノロウイルスによる食中毒発生件数。厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」より。

生カキよりはるかに高リスクの糞便や吐物

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ノロウイルスの感染リスク。下痢便や吐物などによる
リスクが高い。

ノロウイルスの感染リスクは図の通り、大量のウイルスが含まれた患者の糞便、吐物であり、また、そのウイルスを少量含む生カキなどの貝類である。ただし、生カキは内臓を含めて生食するために感染するので、十分に加熱調理すれば感染することはない。

ノロウイルスの性質や予防対策を表に示したが、食中毒対策のメインは自身がノロウイルスの患者や保有者にならないことである。

ノロウイルスの性質

流行と感染 ・一年中発生するが冬季に流行する
・10~100粒子のウイルスで感染
・感染者調理による食中毒が多い
・生カキによる食中毒も多い
・井戸水などからの感染例もある
・乾燥したウイルス粒子は浮遊する
・海外でも流行を繰り返している
発症と症状 ・感染しても発症しないこともある
・潜伏期間は24~48時間
・子供はおう吐、大人は下痢が多い
・ワクチンや効果的な治療法はない
・幼児や高齢者は脱水症状に注意
・通常は3日間程度で回復する
・感染後1ケ月近くウイルス保有
・回復しても大量のウイルスを排泄
耐熱性と耐薬剤 ・60℃30分の加熱処理に安定
・死滅には85~90℃90秒間の加熱
・酸(pH3溶液)3時間で失活しない
・アルコールにも強い
・水道水の塩素では死滅しない
・200ppm程度の塩素濃度で不活化
生活環等 ・人間の腸管のみで増殖
・下水や河川・海に流れ貝類に蓄積
・培養できないので実験できない
・低温だと長時間にわたり残存
・遺伝学的にGⅠ・GⅡに分類
・GⅠ15種、GⅡ18種類と多様

ノロウイルスの性質。「GI」「GII」は、ヒトの感染症や食中毒から検出される主なノロウイルスの遺伝学的分類。ヒトに感染するものとしては他にGIVがある。またGIIIはウシやヒツジ、GVはネズミに感染する。


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執筆者プロフィール

小暮 実(食品衛生アドバイザー) 

1955(昭和30)年生まれ。東京農工大学農学部農芸化学科卒、雪印乳業(株)を経て、中央区保健所にて39年間食品衛生監視員として勤務。銀座、日本橋、築地などの飲食店や食品輸入業者の監視指導にあたり、多数の食中毒事件や違反食品の調査措置経験あり。現在、食品衛生アドバイザーとして活動中。

<記事提供:食の研究所
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