食の研究所

魚の消費が減っても市場拡大していた「骨なし魚」~高齢社会で再び注目が集まる“安全に食べられる魚”

佐藤 成美(サイエンスライター)  2017年05月01日

骨を抜く加工機械は開発されているが、魚種によっても、個体によっても骨のつき方に違いがあり、機械で骨を抜くのは困難だ。メーカーは処理方法に工夫をこらすが、最後は人手に頼らざるを得ない。そのため、人件費の安いタイやベトナムなどの東南アジアや中国に製造拠点を置き、冷凍品として流通している。

主な魚種は、あじやいわし、さば、かれい、さけ、さわら、めばるなどさまざま。製品は、切り身のままのものもあれば、調理しやすいように調味したもの、煮魚や焼き魚に調理したものがある。

「凍ったまま調理」がスタンダードに

多くのメーカーが骨なし魚に参入し、競争は激化している。次々と発売される骨なし魚の新製品には、凍ったまま調理できることを謳っているものが多い。凍った魚をそのまま調理をすると急速に解凍されて、魚から液汁が出る。液汁とともにうまみは逃げるし、身はぱさぱさになり臭みが出るので、冷凍魚は解凍して調理するのが一般的だ。

しかし、人手の少ない介護施設や病院などでは、なるべく手間を省き、調理時間を短縮したい。そんな現場のニーズから、解凍せずにおいしく調理できる製品が生まれたのである。

各メーカーは、切り身や調味液に保水成分を加えるなど特殊な技術を開発し、凍ったまま調理しても風味が損なわれないようにしている。また、凍ったままおいしく調理できる方法を自社で開発して、ユーザーに提案しているメーカーもある。さらに、調理したものを湯煎してすぐ盛りつけられるもの、自然解凍でもおいしく食べられるものなどもある。これらは魚肉の食感を柔らかく保つための工夫がされている。

業界団体と国、2つのマーク

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「ユニバーサルデザインフード」のマークの例。
(日本介護食品協議会資料より)

骨なし魚には、高齢者がもっと食べやすくなるように、「ユニバーサルデザインフード」として開発された製品も多く出回っている。

ユニバーサルデザインフードは、日常の食事から介護食まで使えるように食べやすさに配慮した食品として日本介護食品協議会が定めたもの。同協議会では、食品を選択するときの目安として、食品を固さや粘度に応じて「容易に嚙める」や「噛まずに食べられる」などの表示をマークとともに定めている。


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執筆者プロフィール

佐藤 成美(サイエンスライター) 

佐藤 成美(さとうなるみ) サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「おいしさ」の科学』(講談社ブルーバックス)『お酒の科学』(日刊工業新聞社)など多数。

<記事提供:食の研究所
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