食の研究所

ゲノム編集は遺伝子組換えか? 世界的な争点に~「新しい育種技術」の可能性と課題(後篇)

漆原 次郎(フリーランス記者)  2017年03月16日

――他の国で、注目すべき動きはありますか。

立川 アルゼンチンでは、先ほど紹介したニュージーランドとは対照的な対応がとられています。

アルゼンチンの農牧水産省は、2015年5月にNBT由来の作物について「事前相談手続き」を定めました。「外来遺伝子が存在しているか」と「中間段階で外来遺伝子を組み込んだか」について、2つとも「ノー」とされれば“非遺伝子組換え作物”と見なされます。さらに「イエス」であっても、「最終製品において外来遺伝子が除去されているか」について、科学的知見に基づき「イエス」と答えられれば、その製品は“非遺伝子組換え作物”扱いされます。

――ニュージーランドの例のように遺伝子組換え扱いを前提とするのと、アルゼンチンのように遺伝子組換え扱いを前提としないのでは、規制のされ方が大きく違ってきますね。

立川 ええ。ゲノム編集などのNBTを巡る国際的な規制の調和は、すでに難しくなりつつある状況といえます。

合意形成には「科学的証拠」と「言説」が重要

――今後、ゲノム編集をはじめとするNBTの規制をめぐる合意形成は、どのようになされていくことになると考えますか。

立川 まず、さまざまな科学的エビデンスの蓄積を進めることが重要になると思います。

 ただし、科学的エビデンスだけでは合意形成できない場合が多いのも確かです。とくに、同一のエビデンスに対して、解釈や価値判断が異なる場合、歩み寄ること自体が難しいという場合があります。

――その場合、何をもって合意形成されていくことになるのでしょうか。

立川 合意可能な「言説」だと思います。たとえば、「安全・安心」「持続可能」「消費者に軸足」「国際的調和」といった言説です。こうした言葉の中で歩み寄りを目指す傾向はあります。

重要な点は、一度、形成された言説は、その後の政策方向に強く影響を与える場合があるということです。新しい技術が導入される初期段階に、どのような言説のもと議論されるかという点が、その後の技術利用の運命を左右するという点には、今の時点から注意しておく必要があります。


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執筆者プロフィール

漆原 次郎(フリーランス記者) 

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。

<記事提供:食の研究所
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