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ゲノム編集は遺伝子組換えか? 世界的な争点に~「新しい育種技術」の可能性と課題(後篇)

漆原 次郎(フリーランス記者)  2017年03月16日

――民主党のオバマ政権から、共和党のトランプ政権に変わることで影響が生じる可能性はありますか。

立川 はっきりとは分かりませんが、大きな変化はないと思われます。米国の現在のバイテク規制は、そもそも共和党のレーガン大統領政権時に形成されたものです。産業振興を優先させる方針は、政権が変わっても継承されてきました。

――日本についていかがでしょうか。

立川 NBTの各技術がカルタヘナ法に定める遺伝子組換え技術に含まれるかどうか、関係省庁間での検討が進められていると考えられます。今は各省庁が海外の情報収集などを行っている段階であり、政府としての明確な方針は定められていません。

当面は個別の判断がなされていくでしょう。実際、新しい育種技術の1つである「種子生産技術」を利用して作られたトウモロコシを巡って、商業栽培される最終栽培物については“非遺伝子組換え作物”だと判断されました。

NZとアルゼンチンで対極的な規制判断も

――まだ国や地域としての大きな判断はあまり下されていないものの、個別には“非遺伝子組換え”とみなす事例が上がっている傾向のように見受けられます。

立川 けれども、NBTを従来の遺伝子組換え生物の規制対象にすることが“妥当である”とする判決が出た国も現れています。ニュージーランドです。

ニュージーランドでは、ゲノム編集を行った生物の規制上の取り扱いを巡って、政府と非政府組織(NGO)の間で裁判になりました。ジンクフィンガー・ヌクレアーゼやTALEN(タレン)というゲノム編集技術を用いて作ったマツを巡って、同国の「有害物質・新生物法」の規制対象外であるとの決定を下していた政府に対して、NGOが異議申し立てをしました。そして、2014年5月に判決でNGOが勝訴したのです。

――この場合、ゲノム編集が規制対象に当たると判断されたわけですね。判断の理由はどのようなものですか。

立川 ポイントを言うと、争点となったジンクフィンガー・ヌクレアーゼやTALENは新しい技術であり、まだ十分な知見と経験の蓄積がなされたといえず、遺伝子組換えの規制から除外する技術とするのは妥当ではない、ということです。

――ニュージーランド政府は判決にどう対応したのですか。

立川 この判決を受け入れ、“非遺伝子組換え”扱いとする技術を明確にするなど、関連法制の見直しを進めています。


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執筆者プロフィール

漆原 次郎(フリーランス記者) 

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。

<記事提供:食の研究所
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