食の研究所

ゲノム編集は遺伝子組換えか? 世界的な争点に~「新しい育種技術」の可能性と課題(後篇)

漆原 次郎(フリーランス記者)  2017年03月16日

遺伝子組換え生物の国際取引に関する取り決めである「カルタヘナ議定書」が2000年に採択されたことを受けて、日本を含む多国が「カルタヘナ法」を施行しています。その中で「遺伝子組換え生物等」を、「異なる分類学上の科に属する生物の細胞を融合する技術」の利用により得られた核酸またはその複製物を有する生物と定義しています。

――つまり、法律の定義からすれば、生物の中に外来遺伝子が残されているかどうかが、遺伝子組換え生物か否かを判断するポイントになるわけですね。

立川 ええ。外来遺伝子がゲノム内に安定的に導入されていなければ、“非遺伝子組換え”の扱いになる可能性が高いため、産業側の期待が高まっているわけです。

欧米も日本も方針は不透明

――では、NBTを遺伝子組換え扱いするかどうかについて、世界の地域や国の状況はどうなっているのでしょうか。

20170316_kenkyusho_001

立川雅司(たちかわ まさし)氏。茨城大学農学部地
域環境科学科教授。博士(農学)。1962年岐阜県生
まれ。1985年、東京大学大学院社会学研究科修士課
程中退。農林水産省中国農業試験場で勤務。1993年、
米国ミシガン州立大学社会科学部社会学修士課程卒
業。1996年より農林水産技術会議事務局、1998年より
農業総合研究所(現・農林水産政策研究所)を経て、
2007年、茨城大学農学部准教授。2010年より現職。

立川 まず、欧州連合(EU)については、行政当局である欧州委員会が規制上の判断を示さないまま時間が経過している状況です。欧州委員会は、今後「法的解釈文書」を公表するとしていますが、公表が大幅に遅れていて、いまだ公表されていないのです。

そのため、加盟国によっては独自の規制判断をする動きも出てきています。たとえば、ドイツなどでは、ゲノム編集技術に類似したオリゴヌクレオチド誘発突然変異導入技術(ODM:Oligonucleotide-Directed Mutagenesis)という方法で作った除草剤耐性ナタネについて、“非遺伝子組換え作物”だとする判断がありました。ただし、欧州委員会が今後、異なる判断をした場合はその効力が失われるという条件つきです。

――欧州委員会の判断が待たれている状況なのですね。

立川 ええ。けれども、それですぐ決着するわけではありません。どんな解釈であっても、反対者から提訴される可能性がありますから。提訴された場合、欧州司法裁判所からの最終審決がなされて初めて法律上の解釈が確定することになります。

――米国の状況はいかがですか。

立川 ゲノム編集などの新たな育種技術を用いて作り出した生物が規制対象かどうかは、米国でもまだあいまいです。開発者たちは、個別に関係省庁に問いあわせを行っているものと考えられます。


BtoBプラットフォーム規格書

執筆者プロフィール

漆原 次郎(フリーランス記者) 

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。

<記事提供:食の研究所
JBpress、現代ビジネス、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインの4つのビジネスサイトが共同運営する「食」の専門ページ。栄養士が勧める身体にいい食べ方、誰でも知っている定番料理の意外な起源、身近な食品の豆知識、食の安全に関する最新情報など硬軟幅広い情報を提供。
食の研究所はこちらhttp://food.ismedia.jp/

食の研究所 バックナンバー

おすすめ記事

関連タグ

『BtoBプラットフォーム』とのID統合について