食の研究所
漆原 次郎(フリーランス記者) 2017年02月23日
いまは、新たなツールが出始めた段階です。このツールが社会でどのように使われていくかは、これから決まっていきます。影響がどの程度あるのかについても、未知数なところがまだあります。
少なくとも、育種の方法が相当に変わってきているということは認識しておいてよいと思います。
――新たな技術を巡っては、ニュースなどに敏感でない限り、「こんなことが進んでいたとは」と後になって気づかされる場合が多い気がします。
立川雅司(たちかわ まさし)氏。茨城大学農学部地
域環境科学科教授。博士(農学)。1962年岐阜県生
まれ。1985年、東京大学大学院社会学研究科修士課
程中退。農林水産省中国農業試験場で勤務。1993年、
米国ミシガン州立大学社会科学部社会学修士課程卒
業。1996年より農林水産技術会議事務局、1998年より
農業総合研究所(現・農林水産政策研究所)を経て、
2007年、茨城大学農学部准教授。2010年より現職。
立川 従来の育種技術であっても、新しい育種技術であっても、それらは基本的に生命科学の技術が蓄積してきた結果としてあるものです。たとえば、ゲノム編集という効率的なツールは、その技術だけで機能するのではなく、バイオインフォマティクス(生命情報学)などによるゲノム解析技術が蓄積されたことで成立しているものです。
そうした育種技術の今日的な姿に対しては、多くの人々が知識を持つということは望ましいことであるとは思います。
NBTについて、各国の規制を巡る動きはどうなっているのでしょうか。
立川 NBTを用いて作出した生物の規制上の位置づけについては、各国で検討がなされているとともに、経済協力開発機構(OECD)などの場でも国際的に議論されており、定まってはいません。
――今後、どのような点がポイントになるでしょうか。
立川 先にお話したように、既存の遺伝子組換えなどの制度的枠組みとの関連性が重要になります。各国のNBTの検討状況を見てみると、規制について対極ともいえる行政対応をとる国が現れつつあるのです。
(後篇へ続く)
1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。
<記事提供:食の研究所>
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