食の研究所

“衝撃”のゲノム編集、作物は食卓に並ぶのか?~「新しい育種技術」の可能性と課題(前篇)

漆原 次郎(フリーランス記者)  2017年02月23日

――日本はいかがですか。

立川 日本も積極的な開発を進めようとしています。

具体的には、内閣府に設置された総合科学技術・イノベーション会議が司令塔となっている「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)の一環として、2014年、NBTに関わる府省連携研究開発プロジェクトが開始しています。今後、日本発の手法の開発や育種成果が生まれてくるものと予想されます。

――活用に積極的な地域や国が多いようですが、NBTの活用に懸念を示すような動きはないのでしょうか。

立川 欧州では、有機農業団体などから規制を求める声は上がっています。2015年12月、国際有機農業運動連盟(IFOAM)EUグループが、すべてのNBTに対して、予防原則にもとづいて、リスク評価、表示、トレーサビリティの実施を要請しました。有機農業団体からの公式的な表明としては初の事例です。

――そうした要請をする理由はどのようなものでしょうか。

立川 NBTには、遺伝子組換えと同じDNA操作技術が利用されており、遺伝子組換えとして扱うべき、という考え方によるものです。IFOAM-EUは、すべてのNBT作物について遺伝子組換え作物として規制すべきだと主張しています。

また、変異からもたらされる結果は、生物体そのものだけでなく、生態系にも不確実性をもたらす可能性があるという態度もとっています。従来の育種とは変化の速度が大きく異なるため、生態系への影響が懸念される、ということのようです。

「育種の方法が相当に変わってきている」

――育種を巡ってゲノム編集などの新しい技術が開発されていることを、私たち市民はどのように受け止めればよいのでしょうか。

立川 ゲノム編集作物は遺伝子組換え作物と違って、従来の育種の延長線上で議論されているところは多いとは思います。これは最終的に得られる作物に外来の遺伝子が組み込まれていないこと、また時間さえかければ、従来育種を用いても同じものが得られると考えられているためです。

社会的影響が大きいと考えるか、そして、不確実性が高いと考えるか。どちらも高ければ、市民にとって大きな問題となりますから、市民も議論に参加する形になるのが望ましいといえます。


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執筆者プロフィール

漆原 次郎(フリーランス記者) 

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。

<記事提供:食の研究所
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