法令対策
2016年11月21日
異物混入、不正表示など、近年、増加傾向にある食品事故。多くの企業では、“事故を起こさないための安全管理の強化”が行われているが、一方で“事故を起こしてしまったときの備え”は、どうだろうか?
万が一、事故を起こしてしまった場合、事業者は問題となった製品を迅速に、正確に回収しなければならない。消費者の安全確保と、被害拡大の防止のためだ。しかし、食品の自主回収には公的なガイドラインも、統一と言える基準もない。そうなると、企業は“もしも”のときのために、食品リコールについて理解し、連絡系統や回収の方法などを事前に検討しておくことが重要になってくる。
そこで今回は、前・後編の2回にわけて、食品リコール(商品回収)の種類や自主回収の判断要素、さらに回収にかかるコストや事前の対策について、それぞれのプロにお話を伺った。
まずは、近年の食品事故の状況を把握しておこう。フーズチャネルの食品事故情報コーナーをもとに算出したところ、2016年1月から2016年10月末までに、回収・返金を伴う食品事故が起きた件数は903件。2015年同期間の881件と比較すると、24件増加している。
公益社団法人日本食品衛生協会
技術参与 田中豊隆氏
最近の食品事故件数の傾向について、食品事業者向けに衛生指導などを行う公益社団法人日本食品衛生協会の技術参与・田中豊隆氏はこう説明する。
「食品の自主回収はここ数年、年間1,000件程度で推移していますが、その数が急激に増えたのは2007年以降です。この頃、北海道の食肉加工業者による牛ミンチ偽装や有名老舗料亭の産地偽装など、大手企業や有名ブランド商品に相次いで不正が見つかり、社会問題にまで発展しました。“食の安全”に対する消費者の意識が一気に高まったことが背景にあります」(田中氏・以下同)
「商品回収は食品に不良や欠陥がある、またはその疑いがある場合に、健康被害などの危害を最小限にすることを目的に行われます。事業者が行政機関に命じられて強制的に、または自主的にその食品を流通過程や消費者から回収することを指します」
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