法令対策
森田 満樹(消費生活コンサルタント) 2016年09月16日
食品表示の新しい法律「食品表示法」が2015年4月1日に施行され、1年5カ月が経ちました。新法では、食品表示基準という下位法令で細かいルールが定められており(※1)、食品事業者の皆さんはそれに沿って表示をつくることになります。現在、各企業の表示担当者が対応に追われているのではないでしょうか。
今は移行措置期間中で、生鮮食品は2016年9月30日まで、加工食品は2020年3月31日の製造分までは旧表示でもよいことになっています。そのせいか、現在でも旧表示の商品がほとんどで、新表示への移行はあまり進んでいません。
先日もスーパーに並ぶ商品のうち、新表示に移行したものがどのくらいあるか調べてみましたが、1割にも満たない状況でした。今回はこれらの商品をもとに、移行の状況と新表示の変更点をあわせて解説したいと思います。
(※1)詳細は『食品表示基準でここまで変わる(前編)(後編)』で解説中
アレルギー表示は、「個別表示」(原材料ごとにアレルゲンを表記)と「一括表示」(原材料の最後にまとめてアレルゲンを表記、事例①②)の2つがあり、新法では個別表示が原則となりました。一括表示は例外として位置づけられますが、文字数や消費者にとってどちらがよいか根拠があれば、事業者が判断してもよいとされています。
旧表示では原材料名にアレルゲンが表示してある場合、一括表示ではアレルゲンの省略が可能でした。しかし、新基準では省略が不可となり、もらさずアレルゲンを表示しなければなりません。例えば、事例①のように原材料名の欄に「卵」と表示してあっても、一括表示では重ねて「一部に卵を含む」と表示します。
また、旧表示のように「原材料の一部に」から始まるのではなく、「一部に」から始まるように表示します。新表示をみると、一括表示も多く使われていることに気づきます。
新基準では、原材料名欄の原材料と添加物を明確に区分をつけて表示することが義務付けられています。区分の方法ですが、新表示をみるとほとんどがスラッシュ(/)を使っていることがわかります。中にはダブルスラッシュ(//)の商品もありました(事例⑤)。スラッシュは全角、半角など、各社によってまちまちですが、消費者にとっては、ここからが添加物だということがわかります。
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九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、民間調査会社等を経て、現在は消費生活コンサルタントとして活躍。 食品表示に精通し、先に行われた食品表示一元化検討会では委員を務めた。
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