食の研究所
佐藤 成美(サイエンスライター) 2016年07月21日
夏到来。薄着の季節になると、「ダイエット」を始める人も多いことだろう。ダイエットとは、もともとは「日常の食事」を意味する言葉だが、いまでは「痩身」「減量」の意味で使われるほうが多い。
人びとがダイエットに励むのは体重が増えるからだ。では、なぜ体重は増えるのだろうか。エネルギーバランスのしくみを探ってみた。
食べ過ぎると、太るのが心配になる。食べ物が脂肪になるのも不思議だ。
食べ物から供給される栄養素のうち、おもなエネルギー源は糖質、脂肪、たんぱく質からなる。糖質とは、炭水化物のうちでんぷんや糖類など消化されるものをいう。糖質は体内に吸収されると、グリコーゲンとして肝臓や筋肉に、あるいは脂肪に変換されて脂肪組織に蓄えられる。脂肪も脂肪組織に蓄えられ、また、たんぱく質は体をつくるたんぱく質の素材となる。
摂取したエネルギーの大半はすぐに使わずに脂肪として貯めておき、必要に応じて消費する。これは、生物が飢餓に備えて進化させた機能的なシステムだ。
生物の歴史を遡れば、食べ物にありつけるのはまれなことだった。餓死することもあっただろう。そこで、生物はエネルギー源が枯渇したときに備え、エネルギーを蓄える手段を身につけたのである。
脂肪は、重さあたりのエネルギーが糖質の2倍以上あるので、少ない量でたくさんのエネルギーを貯めておける。効率のよい脂肪を使って、エネルギーを蓄える機能を身につけたおかげで、次はいつ食べられるのかも分からない状況から、人類は生き延びることができた。
このように人類が繁栄を遂げられたのも、まさに脂肪のおかげなのである。脂肪はダイエットの敵と思うかもしれないが、むしろ私たちは脂肪に感謝しなければならないのかもしれない。
生体には、エネルギーの出し入れを調節する働きがあり、摂取エネルギーと消費エネルギーが等しくなるように厳密にコントロールされている。消費エネルギーが摂取エネルギーを上回れば、脂肪として貯めておいたエネルギーが使われる。一方、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回れば、脂肪として貯めておくになる。
佐藤 成美(さとうなるみ) サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「
<記事提供:食の研究所>
JBpress、 現代ビジネス、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインの4つのビジネスサイトが共同運営する「食」の専門ページ。栄養士が勧める身体にいい食べ 方、誰でも知っている定番料理の意外な起源、身近な食品の豆知識、食の安全に関する最新情報など硬軟幅広い情報を提供。
食の研究所はこちらhttp://food.ismedia.jp/
>> もっとみる