法令対策

食品表示基準でここまで変わる(前編)~食品区分の統一、製造所固有記号のルール改善など

森田 満樹(消費生活コンサルタント)  2015年08月27日

ただし、業務用食品は2020年3月31日までに『販売』されたものまでが移行措置期間となっており賞味期間の長いものは注意が必要です。

移行期間内は現行制度(旧基準)による表示が可能ですが、あくまでこれまで作った包装材(ラベル)の在庫を消化するための期間と考え、準備期間内に新しい表示への切り替えを進めていただければと思います。

気を付けなければいけないのは、一つの商品の表示の中で旧基準と新基準の混在は認められず、新基準の表示に移行する場合は全ての項目で新ルールに変えなくてはならないという点です。たとえば、今回から義務化された栄養成分表示だけに対応してナトリウム表示を食塩相当量に変更し、アレルギー表示ルールの変更は後まわし、ということは認められていません。

これは、食物アレルギーを持つ方が一部だけを見て新基準に移行していると勘違いし、事故につながりかねないからです。移行期間が5年間は、新基準と旧基準が同時に存在しますので、利用する側も注意が必要です。

主な変更点

本コラムでは、現行(旧制度)の表示基準からの変更点の中でも、特に影響が大きい5つをピックアップしました。

<消費者庁説明の食品表示基準における旧制度からの主な変更点>

項目基準案・現行からの主な変更点
①加工食品と生鮮食品の区分統一 法律で異なる食品区分をJAS法の考え方に統一・簡単な加工は加工食品に整理(ドライマンゴー等は加工食品の表示が必要となる)
②製造所固有記号ルールの改善 原則として2以上の工場で製造する場合に限り利用可能、製造所固有記号を利用する場合は回答連絡先、webアドレス等を表示
③表示レイアウトの改善 ①表示可能面積おおむね30平方cm以下の場合、安全性に関する表示事項の省略不可。②原材料と添加物は、区分を明確に表示
④アレルギー表示ルールの改善 特定加工食品及び拡大表記を廃止。個別表示を原則とし例外的に一括表示が可能とする、一括表示の場合は含まれる全てのアレルゲンをまとめて表示する
⑤栄養成分表示の義務化 原則として全ての消費者向けの加工食品及び添加物に栄養成分表示を義務付け、義務5項目、推奨2項目に。ナトリウムは「食塩相当量」に

 

①加工食品と生鮮食品の区分統一
新基準では、これまで『JAS法』と『食品衛生法』によって異なっていた「加工食品」と「生鮮食品」の区分を整理しています。新基準では「乾燥、軽度の撒塩、調味」したものは、加工食品の分類に変更され、たとえば乾燥果実のドライマンゴーは食品衛生法で生鮮食品でしたが、『JAS法』に合わせて加工品の扱いになります。

▼加工食品と生鮮食品の定義

「加工食品」は、「製造又は加工された食品」と定義され、具体的な品目は『食品表示基準』別表第一に掲げられています。

また、「生鮮食品」は、「加工食品及び添加物以外の食品」と定義され、単に水洗いや切断、冷凍等したもの等が該当し、具体的な品目は『食品表示基準』別表第二に掲げられています。

別表第二では「調整」「選別」された農産物も生鮮食品としていますが、この場合の「調整」とは、たとえば生産者による収穫後の作業の一環として行われる大豆の乾燥行為なども含み、乾燥大豆は生鮮食品に分類されます。このように加工食品と生鮮食品の分類はわかりにくく、一般消費者の感覚とはかなり異なりますので、個別の具体例を見て判断することが求められます。

また、混合、盛り合わせの場合には、同種混合は生鮮食品、異種混合は加工食品となります。たとえば、キャベツの単品カット野菜は生鮮ですので、『原産地』が必要です。しかし、キャベツとニンジンのサラダミックスでは異種混合で「加工食品」となり、『原産地』ではなく『原料原産地名』が必要になります。

*加工食品と生鮮食品については「Q&A総則-12,13 p59-p60」を参照ください。

執筆者プロフィール

森田 満樹(消費生活コンサルタント) 

九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、民間調査会社等を経て、現在は消費生活コンサルタントとして活躍。 食品表示に精通し、先に行われた食品表示一元化検討会では委員を務めた。

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