食の研究所
白田 茜(フリーランス記者) 2015年08月24日
家にいながら欲しい食材が希望の時間に届く――。
近年、生協やネットスーパー、食材の宅配サービスなど宅配市場が拡大を続けている。背景には、インターネット通販の急成長による、ネットでの買い物の日常化や、単身世帯や共働き世帯の増加などがありそうだ。
成長期に突入しているネットスーパーでは、物流コストをいかに削るかが課題になっているようだ。宅配市場の現状と可能性をみていきたい。
「ネットスーパー」は、既存のスーパーマーケットがインターネットで注文を受け付け、既存店舗から家まで注文商品を配達するサービスだ。当日配送が可能なところもあり、「重い物を運ばなくていい」という利便性が消費者に受け入れられつつある。
大手チェーンで最初にネットスーパーを開始したのは西友で2000年のこと。2001年にはイトーヨーカドー、イズミヤと続いた。2008年にダイエーやイオンなど大手総合スーパーがネットスーパーに参入すると、ライフコーポレーションなど食品スーパーへと広がっていった。
地域のスーパーもネットスーパー事業に次々と参入している。2009年に、いちい(福島県)、2010年にフジ(愛媛県)、タイヨー(鹿児島県)、2011年にはカスミ(茨城県つくば市)がサービスを開始。2014年にはヨークベニマル(福島県郡山市)が2年内にネットスーパーに参入することを表明している。
分類 | チェーン名 | 開始年 | 取扱品目数 | 配送料 | 会員数 | その他 |
---|---|---|---|---|---|---|
貴社サイト | 西友 | 2000年 | 最大24000 | 300円 (5000円以上で無料) |
50万人 | |
イトーヨーカドー | 2001年 | 30000 | 324円 | 約180万人 | ||
イズミヤ | 2001年 | 6000 | 200円+税(3000未満) 100円+税(3000以上) その他、月会費コースもあり |
1万人 | 第2、3類の医薬品350アイテム | |
マルエツ | 2005年 | 約2000 ~3000 |
200円+税 (1800円以上無料) |
不明 | 楽天サイトでオープンしたが、自社サイトを設立 | |
オークワ | 2006年 | 10000 | 300円+税 (1万円以上無料) |
不明 | ||
ユニー | 2007年 | 12000 | 300円+税 (3000円以上無料) |
不明 | ||
イオン | 2008年 | 12000 | 300円+税 (5000円以上無料) |
950万人 | ||
ダイエー | 2008年 | 15000 | 300円+税 | 10万9千人 | ||
いちい (福島県) |
2009年 | 5000 | 360円 (3000円以上無料) |
1万人 | ||
フジ (愛媛県) |
2010年 | 7000 | 210円 (1500円以上で105円、 5000円以上で無料) |
3000人 | 2015年より医薬品約1300点取扱う。 | |
タイヨー (鹿児島県) |
2010年 | 5000 | 300円+税 (5000円以上無料) |
13000人 | ||
ライフ | 2011年 | 不明 | 300円+税 (4630円以上無料) その他、使い放題チケットあり |
不明 | ||
カスミ (茨城県) |
2011年 | 不明 | 100円+税 (2000円以上無料) |
不明 | ||
楽天サイト | 紀伊國屋 | 2002年 | 3000 | 840円 (送料540円+お買物代行料324円) |
不明 | |
東急ストア | 2009年 | 4200 | 300円+税(5000円以上) 500円+税(5000円未満) |
不明 | ||
関西スーパー | 2009年 | 3000 | 300円+税 | 不明 |
主なネットスーパーの参入状況。各数字は概数(各社ホームページ等の情報をもとに筆者作成)
配送時間が短いことや、時間指定できることなど利便性が高いのがネットスーパーの特徴だ。イトーヨーカドーは、注文当日または、翌日の昼から21時までの間で時間帯指定できるサービスを展開。イオンも、ヤマト運輸と連携して16時までに注文すれば当日に宅配するサービスを展開している。消費者の“なるべく早く欲しい”というニーズを満たすべく、注文から自宅に届けるまでのスピードは加速している。
近年では、スーパーマーケットだけでなく、IT大手もネットスーパーに参入している。Yahoo!は「Yahoo!ショッピング」を展開し、食品では水、ビール、ジュースなどの飲料、洋菓子や和菓子、魚貝類、肉、加工品、野菜、フルーツ、米、パン類、麺類、惣菜などと多岐にわたり取り扱っている。
2012年7月には、楽天のグループ会社「楽天マート」がネットスーパーのサービス提供を開始した。楽天はすでに、紀ノ国屋や関西スーパーのネットスーパーが楽天のモールに出店する「楽天ネットスーパー」を立ち上げているが、今回は楽天自ら商品を仕入れ、販売する直営スタイルだ。
「実はそんなに儲からない」といわれているネットスーパー。スーパーマーケット各社は、なぜネットスーパー事業に乗り出しているのか。
実際、ネットスーパーは宅配や収集・仕分けや車両、システムなどのコストがかかる。たとえ利益が薄くても「うちだけやめるわけにはいかない」というのが本音かもしれない。競合店が次々とネットスーパーに参入する中、普段は自店で買い物をする顧客が、商圏外のネットスーパーに流れてしまう可能性がある。
白田 茜(しろた あかね) 1978年佐賀県生まれ。 佐賀県庁で食品のブランド化に関わる。その後、大学院で農業政策や食品安全に関するリスクコミュニケーションを学ぶ。
食品コンサルタント会社を経て、現在は社会的関心が高い科学ニュースについて専門家のコメントを収集しジャーナリストに提供する活動をしている。関心のあるテーマは、農業、食品流通、食品安全、リスクコミュニケーション。
<記事提供:食の研究所>
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