食の研究所
白田 茜(フリーランス記者) 2015年06月24日
たしかに、公開された情報には有識者向けのほかに「一般向け」の情報がある。しかし、「無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験」など、専門用語が説明もなくそのまま書かれているものもあり、一般人が内容を理解するのはかなり難しい内容になっている。また、省略しすぎて重要な情報が欠けてしまっている例も散見されているという。
消費者は事業者から一般向けに公開された情報を見て判断するほかないので、科学的根拠について正確な情報をより分かりやすく伝えるよう工夫が求められる。
新制度に対応できない“いわゆる健康食品”は淘汰されていく可能性があることは、2014年5月の記事「後を絶たない健康食品の被害、消費者庁が管理強化へ」でも述べた。
新制度が解禁される前日の今年3月31日に、消費者庁は「機能○○食品」など紛らわしい表現を使ってインターネットで商品を販売していた25業者に、表現を改善するよう文書で要請した。消費者庁が3月末にインターネットで調査したところ、25業者が野菜やサプリメントなど計31品目で紛らわしい表現を使っており、健康増進法に違反するおそれがあると判断したという。
今回の機能性表示食品の対象を、臨床試験か研究レビューという科学的根拠のある食品に限ったことや、販売後ではなく「販売前60日前に届出」にしたことは、これまでの健康被害の反省を踏まえてのことかもしれない。新たに機能性表示制度をつくることで、消費者が科学的根拠のある健康食品を選択することが期待されていた。
だが、機能性表示制度は届出制になっているため、科学的根拠の乏しいものを排除することはできない。かといって、安全性や有効性に関する情報の審査が形式的なものになってしまえば、届出制度が形骸化するおそれがある。やはり歯止めは必要だろう。
消費者庁は5月27日、内閣府の食品安全委員会や消費者委員会が安全性を疑問視した製品や成分を事業者が届け出た場合、受理しないようガイドラインを改正する方向で検討に入った。
健康食品市場には、国が安全性と機能性を審査するトクホがすでにある。そこに個別審査が不要な機能性表示食品が加わったことで、消費者の混乱を招きかねない。過去に公的機関が安全性について疑問を呈した機能性表示食品は受理しない、ということになると「個別審査はしない」とされた前提が揺らぐことにもなる。実質的に許可制のような運用が一部でみられ、わざわざトクホと異なる制度を作った意味があるのかという意見もある。
白田 茜(しろた あかね) 1978年佐賀県生まれ。 佐賀県庁で食品のブランド化に関わる。その後、大学院で農業政策や食品安全に関するリスクコミュニケーションを学ぶ。
食品コンサルタント会社を経て、現在は社会的関心が高い科学ニュースについて専門家のコメントを収集しジャーナリストに提供する活動をしている。関心のあるテーマは、農業、食品流通、食品安全、リスクコミュニケーション。
<記事提供:食の研究所>
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