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機能性表示食品に早くも安全性の問題が浮上 -突きつけられる制度の矛盾、国は制度形骸化の歯止めを

白田 茜(フリーランス記者)  2015年06月24日

問題視されているのは、健康食品メーカーのリコムのサプリメント「蹴脂粒(しゅうしりゅう)」だ。エノキタケ抽出物を含む同製品は消費者庁に機能性表示を受理され「体脂肪(内臓脂肪)を減少させる働きがある」としている。しかし、トクホの安全性を審査する食品安全委員会は、蹴脂粒と同じ成分を含んだ同社の「蹴脂茶(しゅうしちゃ)」を「安全性を確認できず、評価できない」と評価している。トクホで安全性が認められなかった成分が、機能性があるとして表示されることになる。

今回、トクホの審査過程で「安全性が確認できない」と指摘された成分を含む商品が、機能性表示食品として受理されたことについて、消費者相は「一般論として安全上問題があるということになった場合には機能性表示食品から外さざるをえない」と述べた。

「蹴脂茶」のときには、食品安全委員会は、成分が脂肪細胞に作用する点を問題視した。評価書では「多岐にわたる臓器に影響を及ぼす可能性は否定できない」と指摘している。また、「マウスを用いた90日間反復強制経口投与試験については、飼育環境が不適切であった可能性を否定できなかった」と述べている。

一方で、機能性表示食品「蹴脂粒」の届出にもこのマウスの調査結果が用いられている。もし、トクホでの審査でひっかかった「蹴脂茶」の一件がなければ、「蹴脂粒」の安全性について疑問が呈されることはなかったかもしれない。果たして食品安全委員会と同じようなレベルで消費者が判断できるのか、疑問が残る。

消費者庁「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」によると、「安全性及び機能性の科学的根拠について新たな知見が得られ、疑義が生じた場合」は、事業者は消費者庁に撤回届出書を提出するとしている。つまり、安全性、機能性に科学的根拠がないことが分かった場合、機能性表示食品として販売してはならず、届出を撤回させられるということだ。

まだまだ分かりにくい「一般向け」説明

全国消費者団体連絡会は2015年5月26日、公的機関で安全性を疑問視された製品や成分については届出を受理しないことなどを求める意見書を、消費者庁長官らに提出した。また、同連絡会が事業者団体などへの要望として発信した「機能性表示食品に関する意見」によると、「機能性の根拠が非常に弱いものが目立つ」という。

臨床試験を行う場合、臨床研究計画の概要を研究開始前に第三者機関に登録し、インターネットで公開する「UMIN(大学病院医療情報ネットワーク)臨床試験登録システム」を経る必要がある。また、臨床試験の結果は、「CONSORT声明」とよばれる国際的にコンセンサスの得られた指針などに準拠した形式で、専門家が水準に達したと認める「査読付き論文」で報告することとされていた。

ただし、機能性表示食品制度の施行後1年間は、企業の準備期間としてCONSART声明に準拠しなくてもよく、また、UMIN臨床試験登録システムへの事前登録も省略されている。そのためか、「臨床試験を機能性の根拠とする製品に問題のあるものが多い」という。

受理された機能性表示食品の情報は公表され、事後的な監視の仕組みが働くと消費者庁は説明している。公表された情報を見て「消費者が自主的かつ合理的に商品を選択することができる」という。

執筆者プロフィール

白田 茜(フリーランス記者) 

白田 茜(しろた あかね) 1978年佐賀県生まれ。 佐賀県庁で食品のブランド化に関わる。その後、大学院で農業政策や食品安全に関するリスクコミュニケーションを学ぶ。
食品コンサルタント会社を経て、現在は社会的関心が高い科学ニュースについて専門家のコメントを収集しジャーナリストに提供する活動をしている。関心のあるテーマは、農業、食品流通、食品安全、リスクコミュニケーション。

<記事提供:食の研究所
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