食の研究所

機能性表示食品に早くも安全性の問題が浮上 -突きつけられる制度の矛盾、国は制度形骸化の歯止めを

白田 茜(フリーランス記者)  2015年06月24日

受理された26件の内容を見ると、キユーピーやキリンビバレッジなど大企業による届出の受理が目立つ。6月1日時点では、生鮮食品の生産者からの届出は受理されていない。機能性表示制度が導入されることで「トクホより簡単かつ費用負担が少ないため、中小企業や生鮮食品の生産者も容易に参入できる」といわれていたが、実際には中小企業や生産者にはハードルが高いのかもしれない。これは制度解禁直後の4月16日時点での話だが、100件以上の届出に対して受理されたのは8件と消費者庁は発表していた。大半に記載不備があったという。現在も受理された食品が大企業のもので占めていることからすると、中小企業や生産者が参入するのは相当に厳しそうだ。

届出には、科学的根拠に関する情報、安全性の評価、製造・品質の管理に関する情報、原材料の情報など、事業者の届出に必要な添付資料だけを見ても32もある。事業者にとっては所定の資料を揃えるだけでも一苦労だ。今後、中小企業や生鮮食品の生産者からの届出が受理される可能性もあるので、動向を待ちたい。

評価の中身は企業・商品でまちまち

食品の機能性評価は「製品で行う臨床試験」か「製品もしくは成分で行う研究レビュー(SR:Systematic Review)」のいずれかになる(これについては、前回の「難しすぎる!機能性表示食品の課題多きスタート」をご参照いただきたい)。届出が受理された26件のうち、臨床試験による評価は6件。SRは19件で、臨床試験とSR両方を行ったものが1件あった。

もっとも、評価方法のレベルには差がある。臨床試験の内容を見ると、対象者数や摂取期間などは事業者によってさまざまだ。例えば、ライオンの「ナイスリムエッセンス ラクトフェリン」は、BMI25以上で20 歳以上の男女 28 名を対象に8週間の摂取期間を設けた。一方、東洋新薬の「メディスリム」は、BMI 25以上で20〜65歳の男女90名を対象に12週間の摂取期間を設けた。「目の疲れ」という主観的な指標を用いて実験を行ったものもあった。

すでにトクホで実績のある成分で安全性や機能性を評価したものもある。例えば、キリンビバレッジの「食事の生茶」と麒麟麦酒の「パーフェクトフリー」。届出られたのは、いずれもトクホで使用が許可されている成分「難消化性デキストリン」だ。「脂肪の吸収を抑える」「血糖値の上昇をおだやかにする」などの働きがあるという。「食事の生茶」は、これらの2つの機能性に「お腹の調子を整える」を加え、整腸作用の3つの機能をうたっている。

トクホはNGなのに、機能性表示食品ならOK?

安全性や機能を国が審査する許可制のトクホと違い、機能性表示食品は企業責任で機能性と安全性を評価し、所定の書類を揃えて消費者庁に届出ればよい。

しかし、トクホで「安全性が確認されていない」と指摘された成分が含まれている商品もあり、早くも安全性に疑問の声が上がっている。

執筆者プロフィール

白田 茜(フリーランス記者) 

白田 茜(しろた あかね) 1978年佐賀県生まれ。 佐賀県庁で食品のブランド化に関わる。その後、大学院で農業政策や食品安全に関するリスクコミュニケーションを学ぶ。
食品コンサルタント会社を経て、現在は社会的関心が高い科学ニュースについて専門家のコメントを収集しジャーナリストに提供する活動をしている。関心のあるテーマは、農業、食品流通、食品安全、リスクコミュニケーション。

<記事提供:食の研究所
JBpress、現代ビジネス、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインの4つのビジネスサイトが共同運営する「食」の専門ページ。栄養士が勧める身体にいい食べ方、誰でも知っている定番料理の意外な起源、身近な食品の豆知識、食の安全に関する最新情報など硬軟幅広い情報を提供。
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