食の研究所
白田 茜(フリーランス記者) 2015年04月22日
一方、機能性食品については、販売開始60日前に消費者庁に届け出た情報は、インターネットで公開され、誰でも内容を確認できるようにするという。また、行政サイドでも市場から製品を購入し、実際の製品に届出内容の成分が含まれているかを検査する予定だ。しかし、検査の頻度やサンプル数、またチェック体制には不透明な部分もある。
疑問なのが、包装とウェブ上に書かれた情報を見て消費者に判断を求めるという点だ。
新制度では、臨床試験と研究レビュー、どちらで得た科学的根拠なのかを分かるようにするという。例えば、臨床試験のほうでは「製品にAという成分が含まれるのでBの機能がある」と表示する。研究レビューのほうでは「製品にAという成分が含まれ、Bの機能があると“報告されている”」と表示する。はたして、一般の消費者に「臨床試験」と「研究レビュー」の違いが分かるのだろうか。
今回の制度では、一般消費者が理解しやすいように噛み砕いて説明した資料もウェブサイトなどで公開されるとはいうが、どこまで理解の助けになるか、まだなんとも言えない。
さらに、先に掲げたように表示項目の種類が多く、留意すべき情報は膨大になる。商品を選択する際、消費者の判断力に委ねるには、あまりにも高度で難しい表示に思われてならない。
審査なしでも健康被害は防げるのだろうか。事業者は消費者からの相談を受ける窓口を設け、また行政機関でも保健所や消費者庁への連絡体制を整え情報収集を強化するという。消費者目線での表示方法の改善と監視体制の整備については、引き続き考えていかなければならないだろう。
事業者にとっても課題は多い。機能性表示をするためは、学術論文のレビューやトクホ並みの臨床試験など科学的根拠があるものに限られる。さらに、国への届出、容器包装への表示方法の整備なども必要だ。安全性への評価や機能性に関する科学的根拠など、包装以外の情報開示の仕組みも考えなくてはならず、事業者にとってはかなりハードルが高い。
政府の肝いりで始まった機能性食品の表示制度。消費者が自分の体調の悩みに合わせて食品を選択できるような制度になるように願いたい。
白田 茜(しろた あかね) 1978年佐賀県生まれ。 佐賀県庁で食品のブランド化に関わる。その後、大学院で農業政策や食品安全に関するリスクコミュニケーションを学ぶ。
食品コンサルタント会社を経て、現在は社会的関心が高い科学ニュースについて専門家のコメントを収集しジャーナリストに提供する活動をしている。関心のあるテーマは、農業、食品流通、食品安全、リスクコミュニケーション。
<記事提供:食の研究所>
JBpress、現代ビジネス、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインの4つのビジネスサイトが共同運営する「食」の専門ページ。栄養士が勧める身体にいい食べ方、誰でも知っている定番料理の意外な起源、身近な食品の豆知識、食の安全に関する最新情報など硬軟幅広い情報を提供。
食の研究所はこちらhttp://food.ismedia.jp/
>> もっとみる