企業のアレルギー対策

食物アレルギー対策を始める前に押さえておきたいポイント

今村慎太郎 (NPO法人アレルギーっこパパの会 理事長)  2014年12月01日

昨今急増している「食物アレルギー」。企業として食物アレルギーの対策に取り組むために押さえるべきことは何か?今回はアレルギー対策を進めるにあたって、前提となる考え方、各アレルギー対応方法のメリットとデメリット、そして、アレルギー対応をする上で重要な原材料情報の把握とコミュニケーションについて解説します。

食物アレルギーは複雑

アレルギー対応を始める前に、食物アレルギーは複雑であることを認識しておく必要があります。それには大きく2つの理由があります。

(1)原因食品が多岐に渡る

加工食品製造・販売業におけるアレルギー物質の表示制度で定められているものは、表示が義務付けられている特定原材料7品目と、可能な限り表示するよう努めるものとして、特定原材料に準ずる20品目です。しかし、食物アレルギーはあらゆる食品が原因食品となりえます。当然、アレルギー表示制度で定められている食品以外で発症する人も多く存在します。

表示が義務付けられている特定原材料 卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かに
特定原材料に準ずるもの あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン

(2)摂取できる量に個人差がある

「卵黄は食べられるが卵白は食べられない」や、「茹で卵なら食べられる」、「チーズ以外の乳製品は食べられる」などよくあるケースで、原因食品を複数持つ場合は、その原因食品ごとに摂取できる量が異なる場合が多々あります。使用された原材料から選択する加工食品と異なり、お客様と直接接する飲食店では、思いもよらぬ原因食品を持つお客様と出会うことがあるでしょう。

「100%の安全はない」という認識を

食物アレルギーに対応する上で100%の安全はあり得るのでしょうか?食物アレルギーは、あらゆる食品が原因となり、人によってはごく微量でも発症することがあります。多種多様な食材を扱う飲食店において、全ての食物アレルギーの人に100%安全な対応をすることは現在の状況では非常に困難であると言わざるを得ません。

しかし、ここで全ての人に100%の安全が保証できないから止めてしまうか、100%の安全はないが、出来る限りの対策をたてていくかが大きな分かれ道だと感じます。企業のアレルギー対策を見てきた経験からすると、リスクマネジメントとお客様への安心を両立している企業は皆さん、「100%の安全はない」、という観点から対策を始めているのがとても興味深いものです。

「知識」よりも大切な「寄り添う気持ち」

食物アレルギーの人に対応するためには、「食物アレルギー」と「食品」の最低限の知識が不可欠です。しかし千差万別で個別の生活事情が密接に関わる食物アレルギーは、習得した知識をそのまま型にはめて対応することが難しく、お客さんと直接対応するスタッフには柔軟性が求められます。実際にアレルギー対応に取り組まれている企業の方で、万が一現場スタッフの対応にミスがあったら、という不安や悩みを抱えている方に出会うことがあります。

では、現場スタッフが食物アレルギーの人に対応できるようになるためにはどうしたらよいのでしょうか?食物アレルギーの人から評価が高い企業の方が口を揃えておっしゃることがあります。それは、「基本的な知識は大切ですが、それ以上に、食物アレルギーの人に寄り添える気持ちを持てるかどうか」です。型にはめられないからこそ、現場スタッフが相手の立場に立って聴く姿勢が大切です。その上でコミュニケーションをとれるようになることが、企業としてのリスクマネジメントの原点になります。

現在普及しているアレルギー対応3つ

ここで、食物アレルギーの対策をたてる上で、現在普及している3つの対応方法を整理しましょう。どの方法を用いるのかはあらかじめメリットとデメリットを見定めた上で最適な対策をとるべきです。

(1)アレルギー表示

141201allergi600w2

加工食品製造・販売業におけるアレルギー物質の表示制度にならい、特定原材料や特定原材料に準じるものを表示する方法です。使用材料の原材料などの情報をまとめた商品規格書を基に、提供するメニューのアレルゲンを表示します。

(2)低アレルゲンメニュー

都内の親子カフェ・イルソーレが提供する「キッズパスタ」

アレルギー原因食品として多い食品を使わないメニューです。特定原材料の7品目を使わないなど、企業によってその定義は様々です。

(3)個別アレルギー対応

食物アレルギーの人の原因食品に合わせて、その人にあった食事を提供することです。

この個別アレルギー対応は、アレルギー表示をしていないケースとしてお考えください。それぞれのメリットとデメリットを表にまとめました。メリットとデメリット、コストを考えた上でどれが最適かを選択した方がよいでしょう。

 メリットデメリット
アレルギー表示 ●一律対応しやすい ●一定量摂取可能なアレルギーの人には簡単に対応ができる ●店頭でアレルギーの人を認識する機会が減るため、調理過程のコンタミ防止配慮が難しく、コンタミに配慮が必要な人の発症リスクは高い ●表示のためにコストがかかる
低アレルゲン
メニュー
●一律対応しやすい ●アレルギー表示だけの場合と比べて、アレルギーの人の認識機会を多くつくれる ●一般商品より安全性が高い商品提供ができる ●商品イメージからアレルギー以外の人が選択しないメニューになりやすく、販売数が限られる ●表示のためにコストがかかる
個別アレルギー
対応
●幅広い食品で対応でき、コンタミ防止に配慮してメニュー提供ができる ●表示をしなくても対応可能で、表示ためのコストがかからない ●柔軟かつ適切なレベルの高い対応が必要で、教育のためのコストがかかる

アレルギー対策で大切なこと

(1)メーカーさんや食品卸さんと連携し、原材料情報を把握

上記3つのアレルギー対応を行う場合、自社で扱うメニューの原材料情報を把握することが、対応の第一歩となります。この原材料情報を把握するためには、材料を供給してくださるメーカーさんや食品卸さんの協力なしには成しえません。

忙しい業務の中で商品規格書を回収することは手間と時間を要しますが、食物アレルギーの事故を未然に防ぐと同時に、企業のリスクマネジメントを強化していくためには不可欠な情報です。メーカーさんや食品卸さんとの協力・連携を大切にしてください。

(2)アレルギーの人とのコミュニケーション

そして、もう一つ大事なことが食物アレルギーの人とのコミュニケーションです。アレルギー対応を行うためには、食物アレルギーの人を認識しなければなりません。このコラムの初回でも触れましたが、アレルギーの人がアレルギーの情報を店側に伝えず、飲食店がアレルギーの人に配慮した調理ができていないという負の連鎖が起きています。コミュニケーションは原材料情報の整備と同じくらい大切なことです。

食物アレルギーの人がアレルギーを伝えやすい雰囲気をつくるためには、現場スタッフが食物アレルギーの人を受け入れられる姿勢をつくることが大切です。そのためには、原材料情報の整備とスタッフの寄り添う気持ちを育むことが欠かせません。

アレルギー対策には、メーカーさんや食品卸さんなどの取引先との連携をする本部にも、食物アレルギーの人と接する現場にも、これまでにない労力が伴います。しかし、目的地を見定めて一つ一つ整備しながらアレルギー対策を進めていくことが、企業のリスクマネジメントと食物アレルギーの人への安全と安心の提供を同時に叶えるでしょう。

執筆者プロフィール

今村慎太郎 (NPO法人アレルギーっこパパの会 理事長) 

当事者の視点で、飲食店のアレルギー対応の安全性向上、アレルギー対応に取り組む飲食店の社会的地位向上を支援しているNPO法人「アレルギーっこパパの会」理事長。アレルギー対応に必要な詳細情報を取得できるツールを飲食店に提供している。
アレコミュプロジェクトWEBサイト:https://www.allergy-communication.com/
アレルギーっこパパの会WEBサイト:http://www.arepapa.jp/

企業のアレルギー対策 バックナンバー

おすすめ記事

関連タグ

メルマガ登録はこちら

経営者インタビュー番外編 『思い出の一皿』

フーズチャネルコンテンツガイド