食の研究所

日本は「食の品質」を世界に輸出せよ

菅 慎太郎(株式会社味香り戦略研究所)  2014年09月24日

全国的に猛暑が続き、台風が日本列島を直撃する中、間もなく収穫を迎える農作物が気になります。天気の変化は受け入れるしかありませんが、大きな被害が出ないことを祈るばかりです。

さて、8月に入り、食料自給率の統計結果が農水省より発表されました。強い農業、そして自立した国の食糧確保を目的として、「食料自給率向上」が叫ばれていますが、平成25年度は、カロリーベースで39%、生産額ベースでは65%と相変わらず低い水準が続いていることが示されました。

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出典:平成25年度食料自給率(農水省発表)より抜粋し、グラフ化

ただし筆者はやみくもに食料自給率を向上させるのがいいことだとは思いません。

確かに食料自給率を向上させることで、食料の価格変動のリスク回避や、「国産」としての安心感の醸成に寄与することができるかもしれません。とはいえ、この限られた国土と農地の中では適切に諸外国との取引を確立していかなければ、安価で安定した食は確保できません。日本の人口は減少傾向に入ったとはいえ、輸入食品に頼る関係は完全には捨て切れないのです。

ましてや、畜産業における飼料の海外依存度は依然として高い状況にあります。飼料米など飼料の国産化を進める施策が推奨されているものの、早急な条件整備や環境の構築は難しいでしょう。先進的な畜産農家の事例を挙げて国産飼料100%化を推奨する声もありますが、国内のすべての畜産に適用できる環境や条件を揃えることは容易ではありません。

食料自給率の改善に際しては、将来的な理想を描きながら、目の前の食を確立していくバランス感覚を持った施策の推進が求められています。「6次化」などの国内施策と並行して「食の安定確保・供給」を何よりも優先させなければいけません。

「期限切れ食肉事件」で消費者はますます不安に

そんな中、輸入食品に関して消費者を不安にさせる事件がまた発生してしまいました。世界最大の食品加工会社であり、アメリカのOSIグループの「上海福喜食品」が期限切れの食肉を使用していたという事件です。日本でもコンビニエンスストアやファストフード店が上海福喜食品の商品を仕入れており、消費者に大きな不安を与えました。

しかし、調達の分散化、トレーサビリティの確立など、コンビニやファストフード店のリスクマネジメント体制が構築されていたこともあり、販売の停止、当該商品の回収、調達国の変更などはスムーズに進みました。この点は企業のリスク対応力の向上が見て取れます。食のレジリエンス(強靭化)に向けて、安全対策や体制構築への投資を肯定する機会となったことでしょう。

そうは言っても、消費者にとって「いま食べているものは大丈夫か」「また起きるのではないか」という不安が簡単には拭えないのは事実です

消費者は、法律やルールで定められた食品表示や、企業を信頼して商品を購入するしか手立てがありません。「どの店で買うか、どのメーカーの商品を買うか」という選択でしか自衛することができないのです。

消費者は、安全性への対策、日常の業務や取引の監督体制など、結局は企業の「情報公開」によって企業の姿勢や取り組みを知ることになります。したがって企業は、「安全」という事実だけでなく、「安心」という分かりやすさを消費者にどのように伝えていくかを真剣に考えなければならなくなるでしょう。

企業が一方的に商品を提供していく大量生産時代の消費傾向から、消費者のニーズやウォンツを汲み取りながら、提供する消費のあり方や質を変えていく、そんな双方向の関係性が求められているに違いありません。

世界の食糧援助の2倍を捨てる日本

また一方で、日本は食料自給率が低く、海外からの輸入が多いにもかかわらず、多くの食を廃棄している事実が存在します。年間約1700万トンもの食品廃棄物が排出(農水省資料)されており、外食産業や家庭での廃棄のうち「本来食べられるのに捨てている」部分、すなわち「食品ロス」が500万~800万トンあると言われています。私たちは、世界全体の食糧援助量の2倍にもあたる食品を、食べられるのに捨てているのです。

コンビニの弁当やスーパーの惣菜、生鮮品が捨てられることもあるでしょう。しかし、家庭の中でも可食部や食べ残しなど消費者自身の食生活においても大量の食品ロスが生まれています。

何より大事なのは、この「食品ロス」があるという事実を認識すること、そしてその改善には、消費者自身の習慣化した「食生活の行動」を改めることです。

食品は「加工品」になるほど、消費期限と用途が限定されていきます。野菜を「サラダ」として購入するよりも、「キャベツ」として購入した方が、炒めものやサラダ、煮物など調理の汎用性と利用用途が広がります。核家族化、夫婦共働き、単身世帯の増加で家庭の調理時間が減少している一方、食材を利活用する知恵によってどう「食品ロス」を減らすか、私たちは「便利さ」と「手間」の間で食の問題に対峙していかねばならない時にきているのです。

執筆者プロフィール

菅 慎太郎(株式会社味香り戦略研究所) 

株式会社味香り戦略研究所味覚参謀、口福ラボ代表。味のトレンドに特化したマーケティングの経験を生かし、大学での講義や地方での商品開発や地域特産物の発掘、ブランド化を手がける。
キッズデザインパーク講師。日本味育協会認定講師。

<記事提供:食の研究所
JBpress、現代ビジネス、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインの4つのビジネスサイトが共同運営する「食」の専門ページ。栄養士が勧める身体にいい食べ方、誰でも知っている定番料理の意外な起源、身近な食品の豆知識、食の安全に関する最新情報など硬軟幅広い情報を提供。
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