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セブン、イオンが先手、「オムニチャネル」はどこまで実現しているのか 食品でも進む販売経路の融合

白田 茜(フリーランス記者)  2014年08月27日

「オムニチャネル」という言葉を聞いたことはあるだろうか。オンラインストアとリアル店舗を統合し、消費者がいつでもどこでも商品を購入することできるようにすることを指す。

流通のオムニチャネル化が私たちの生活をどう変えていくのか。食品を扱う小売の現状を見つつ、考えてみたい。

あらゆる流通チャネルを連携させる

「オムニチャネル」は、英語の“omni-(すべての)”と“channel(経路)”から成り立つ言葉だ。店舗やオンラインストアといった販売チャネルの壁なしに、消費者がどこで買ったと意識せず購入できる流通形態を指す。

いままで、店舗、通販、インターネットなど複数のチャネルを、ターゲット層に応じて使い分ける「マルチチャネル」という概念はあった。例えば、「若年層の共働き夫婦向けにはインターネット通販」「高齢者向けには店頭販売」といった具合だ。

これに対し、オムニチャネルでは、顧客を中心に据えてあらゆるチャネルを連携させ、顧客がいつでもどこでも買い物ができるような環境をつくり出す。

例えば、リアル店舗とオンラインストアをまたいで在庫を把握し、店舗にない商品は最短の配送ルートで取り寄せられるようにする。リアル店舗とオンラインストアの両方の顧客情報を管理し、過去の購入履歴から好みに合った商品をリコメンドするといったことが考えられる。

セブンとイオンがいち早くオムニチャネル化

小売大手のセブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイ)は「オムニチャネル」をビジネスモデルの中心に据えようとしている。セブン&アイは、外部専門家も交えた「推進プロジェクト」を始動。IT企業や専門家も加わり、海外の視察や情報交換をしているという。

オムニチャネルの実現に向けて、まずはネット通販に着手。2013年12月にカタログ通販大手のニッセンホールディングスを買収した。複数の報道によると取得総額は約133億円という。また、ネット通販に力を入れているニッセンを買収して、ニッセンの商品をコンビニエンスストアのセブンイレブンで受け取れるようにした。さらに、グループ20社で扱う約300万の商品をネットで購入できるようにすることも発表した。ネット通販の強化で、2012年度に1000億円だったネット通販の売上高を、2020年度には1兆円にする目標だ。

セブン&アイはさらに、高級衣料の「バーニーズニューヨーク」、インテリア・日用雑貨店Francfranc(フランフラン)などを展開する「バルス」、中国地方に百貨店とスーパーマーケットを持つ「天満屋」と提携し、シナジー効果を生み出そうとしている。

セブン&アイは、傘下にイトーヨーカ堂、セブン-イレブン・ジャパン、そごう・西武、赤ちゃん本舗などを持つ。コンビニ、スーパー、百貨店、専門店など多様な業態を持つので、多種多様な商品の一括購入や、ネットで購入した商品の店頭受け取りサービスなどで、消費者の利便性を最大限まで引き出せる可能性がある。

イオンもオムニチャネル化を加速している。2013年から、ヤフーが運営するショッピングサイト「Yahoo!ショッピング」に参加。「Yahoo!ショッピング」と連携することで、「トップバリュ」などイオンの商品の購入機会を増やすとともに、リアル店舗と連動した企画を行うなど、リアルとネットの相乗効果を狙う。

イオンは店頭でインターネットを活用したサービスも始めた。2013年12月にオープンしたイオン幕張新都心店では、店内にイオンのタブレット端末を40台配置し、酒類、ホームファッション、ベビー用品を対象に、店舗にない商品も取り寄せるサービスを開始した。注文した商品の受け取りは、店舗か自宅を選択できる。イオン幕張新都心店を皮切りに、総合スーパー(GMS)の約500店舗でサービス展開の予定だという。その後、2016年度までにマックスバリュなどスーパーマーケット約1100店舗、ミニストップやまいばすけっとなど約2500店舗で注文商品の受け取りをできるようにする計画だ。

以下は、オムニチャネル化する小売の事例である(参考:インターネット調査を基にまとめた)。

【Macy's(メイシーズ)】(米国の老舗百貨店)

店舗と電子商取引(EC)サイトの在庫や顧客情報を一元化。店舗にない商品はネットや他店から取り寄せるなど、ネットと店頭の両方で顧客の要望に応えられるようにした。店員はモバイル機器を携帯しており、顧客から離れることなく商品の問い合わせに応じたり、在庫状況をチェックして商品を取り寄せることができる。

【コカ・コーラ】(飲料品メーカー)

ファンサイトで顧客をネットから店舗へ誘導する。そしてコーラを購入した客には、ボトルに付いたシールのコードを入力してもらい、景品のポイントサービスを実施する。

【イオン】(大手小売業)

イオン幕張新都心店で「イオンWiFi」を活用した各種サービスを開始。店内にイオンのタブレット端末「AtouchRu*Run」を40台配置して、店舗にない商品も取り寄せ・店頭受け取りができる「タッチ・ゲット」サービスを、リカー、ホームファッション、ベビー用品からスタート。注文した商品の受け取りは店舗か自宅を選択できる。

【セブン&アイ】(大手小売業)

ネット通販の強化で、2012年度に1000億円だったネット通販の売上高を、2020年度には1兆円にする目標。広島地区で「そごう・西武のショッピングサイト」の商品をネットで注文し、近くのセブン-イレブンで受け取る事業会社間の連携テストも実施。

執筆者プロフィール

白田 茜(フリーランス記者) 

白田 茜(しろた あかね) 1978年佐賀県生まれ。 佐賀県庁で食品のブランド化に関わる。その後、大学院で農業政策や食品安全に関するリスクコミュニケーションを学ぶ。
食品コンサルタント会社を経て、現在は社会的関心が高い科学ニュースについて専門家のコメントを収集しジャーナリストに提供する活動をしている。関心のあるテーマは、農業、食品流通、食品安全、リスクコミュニケーション。

<記事提供:食の研究所
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