食の研究所

TPPで押し寄せる外国産食品、安全確保の砦となる国際協定とは ~輸入食品はどこまで安全なのか(後篇)

漆原 次郎(フリーランス記者)  2014年07月23日

野菜、穀類、海産物、加工食品と、私たちが毎日のように何らかの形で接する機会のある輸入食品。その危険性と安全性を前後篇にわたり見つめ直している。

前篇では、輸入食品をめぐる最近の実状を紹介した。「中国産冷凍ギョウザ事件」などで安全性が心配されるようになった中国産輸入食品は、最新2012年のデータでは、輸入量が多いため違反件数は国別で最多だったものの、違反率は平均を下回っているといった状況を見た。

ここに来て大きな関心事になっているのが、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉が妥結した場合、輸入食品をめぐる事情はどう変わるかということだ。4月の日米首脳会談ではTPPに向け「大筋合意」には至らなかったものの、「重要課題について前進する道筋を特定した」との日米共同声明が盛り込まれた。

TPP交渉で妥結が見られれば、将来、私たちが輸入食品に接する機会は増えることになる。TPP締結を機に「食の安全」が脅かされるのではないかという心配の声も上がっている。

そこでTPP締結後の食品の安全性について、前篇に引き続き公益社団法人の日本輸入食品安全推進協会に話を聞く。同協会は1992年に社団法人に、そして2011年に公益社団法人に認定された団体だ。輸入食品の安全性確保のため、自主管理体制の確立推進、人材育成、情報収集・提供などに力を入れている。

TPPが締結された場合、日本人が口にする食品の安全性はどうなるのか。輸入食品は大丈夫なのか。その見通しを、同協会常務理事の鮫島太氏と元常務理事の佐藤勝也氏に聞いた。

SPS協定によって自国の安全基準は守られる

──TPP交渉が妥結し、TPPが締結された場合、日本での輸入食品の安全を守るための状況も変わってくるのでしょうか?

鮫島太氏(以下、敬称略):TPPに直接的に関わっているわけではありませんが、行政から説明を受けているのは、今後TPPにより様々な形で輸入食品は日本に入ってくることになっても、基本的には「SPS協定」は守られるだろうということです。

──「SPS協定」とはどのようなものですか?

鮫島:WTO(世界貿易機関)協定の1つで、「衛生植物検疫措置の適用に関する協定」と呼ばれるものです。自国の食の安全基準と他国の食の安全基準が異なるような場合、科学的正当性があれば、このSPS協定によって自国の安全基準を適用できることになっています。

日本輸入食品安全推進協会の鮫島太氏(左)と元常
務理事の佐藤勝也氏。同協会は、輸入食品を扱う事
業者が輸入食品の安全性を確保するための「輸入食
品衛生管理者」制度を実施し、毎年秋に管理者養成
講習会を行っている。また『新訂Q&A食品輸入ハンド
ブック』(中央法規)なども出版している。

国際的な食品の基準の策定については、原則としては、コ-デックス規格という国際規格・製造規範が定められてはいます。国連の食料農業機関(FAO)および世界保健機関(WHO)により消費者の健康の保護や食品の公正な貿易の確保などを目的に設立されたCODEX委員会という政府間機関で定められたものです。基本的には、加盟国はこのコーデックス規格を尊重して自国の基準を定めることになっています。

しかし、各国の食事情は様々に異なるため、厳密には各国の基準が異なる場合もあるわけです。そこで輸入食品を受け入れる国が「われわれの国が厳しく基準をとっているのは、こういう理由によるものです」と科学的根拠を示すことで、その国の基準が適用されるのです。

ですから、TPPが始まったらおかしな農薬が残留した農産物が入ってくる、といった極端な状況にはならないでしょう。

執筆者プロフィール

漆原 次郎(フリーランス記者) 

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。

<記事提供:食の研究所
JBpress、現代ビジネス、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインの4つのビジネスサイトが共同運営する「食」の専門ページ。栄養士が勧める身体にいい食べ方、誰でも知っている定番料理の意外な起源、身近な食品の豆知識、食の安全に関する最新情報など硬軟幅広い情報を提供。
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