食の研究所

昔のように怖がる必要はない中国産食品~輸入食品はどこまで安全なのか(前篇)

漆原 次郎(フリーランス記者)  2014年06月25日

ニュースで一時期頻繁に報じられていたことは、しばらくすると下火になる。すると、報じられていたときの印象が、そのまま人びとの中に先入観として残されることがある。

「輸入食品」についてはどうだろうか。

ここ数年で輸入食品をめぐり最も問題化した事件が、2007年末から翌年にかけての「中国産冷凍ギョウザ事件」だった。中国から輸入された冷凍ギョウザを食べた千葉県と兵庫県の計10人が中毒症状を訴えた。ギョーザからは殺虫剤メタミドホスが検出され、中国のギョウザ製造工場の工員が逮捕された。

ニュースを機に「中国から輸入食品は危ない」との思いを強くした人もいるだろう。さらには、「やはり輸入食品は危ない」という先入観を持つようになった人もいるかもしれない。

事件から6年以上が経った。ニュースで植え付けられた「輸入食品は危ない」という人々の心象と現在の輸入食品の状況に乖離はないだろうか。また今後、日本人が輸入食品に接する機会がさらに増えるかもしれない。環太平洋経済連携協定(TPP)による食品輸入量増加が予想されるからだ。食の安全性がさらに脅かされるのではという不安はないだろうか。

「輸入食品が危ないかどうか」を、改めて考えてみてもよいのではないか。

そこで今回は輸入食品の現状を知るべく、公益社団法人の日本輸入食品安全推進協会を訪ねた。同協会は輸入、生産、流通、販売に携わる企業による協議会として発足し、1992年には社団法人になった。さらに2011年には公益社団法人に認定された。輸入食品の安全性確保のため、自主管理体制の確立推進、人材育成、情報収集・提供などに力を入れている。

前後篇のうち前篇では、輸入食品の現状、つまり内訳や違反状況、また現状の制度などを同協会常務理事の鮫島太氏に解説してもらう。後篇では、日本がTPP協議で妥結した場合、輸入食品への安全性はどうなるのかという見通しを、鮫島氏と同協会元常務理事の佐藤勝也氏に聞いてみる。

自給率4割未満、食の輸入に頼らざるをえない日本

──日本人にとって輸入食品はどのような存在と考えたらよいでしょうか?

鮫島太氏(以下、敬称略)日本人の食生活にとって切っても切れないものとなっています。日本の2012年度(以下同)の総合食料自給率はカロリーベースで39%です。1965年の73%から大きく減りました。

コメの自給率は相変わらず96%と高いですが、小麦は12%、大豆は8%しかありません。全体では6割以上を輸入食品に頼っています。もし仮に輸入が止まってしまった場合は切実な問題になります。

shokunokenkyujo_20140624

鮫島太氏。公益社団法人日本輸入食品安全推進協会で
常務理事を務める。同協会は、輸入食品を扱う事業者
が輸入食品の安全性を確保するための「輸入食品衛生
管理者」制度を実施し、毎年秋に管理者養成講習会を
行っている。また『新訂Q&A食品輸入ハンドブック』(中
央法規)なども出版している。

輸入食品の重量としては、2000年以降、3000万トン強で頭打ちの状況が続いています。しかし、輸入業者による検疫所への届出件数は2000年で約160万件だったのが、2012年で約220万件に増えました。原料材の他に製品として輸入される食品も増えて、食品の輸入が小口化してきているのです。

鮫島 製品としての輸入も増えたとは言いましたが、現状でも重量で圧倒的に多いのは「農産食品・農産加工食品」、つまり穀類などです。これで輸入食品全体の約3分の2を占めています。農産品以外では「畜産食品・畜産加工食品」「水産食品・水産加工食品」と続きます。

──輸入食品の内訳はどのようなものですか?

鮫島 製品としての輸入も増えたとは言いましたが、現状でも重量で圧倒的に多いのは「農産食品・農産加工食品」、つまり穀類などです。これで輸入食品全体の約3分の2を占めています。農産品以外では「畜産食品・畜産加工食品」「水産食品・水産加工食品」と続きます。

輸入食品の違反率は0.05%

──海外の食品が安全か危険かを見極める尺度として、輸入食品の検疫での違反状況があると思います。現状はどうですか?

鮫島 約220万件の届出の全数が検疫所で書類審査を受け、1割ほどの22万3380件が現物の検査を受けています。このうち、食品衛生法に違反したのは、延べ1122件でした。

──パーセンテージにすると0.05%ですね。どのような違反内容が多いですか?

鮫島 最も多いのは、食品または添加物の基準および規格を定めた第11条に違反しているもので全体の59.4%でした。農薬の残留基準を超えたものや、日本で許されている量を超える添加物が使われていたものなどが当てはまります。

次に多いのが、販売を禁止されている食品および添加物を定めた第6条に違反しているもので、27.7%でした。例えば、アフラトキシンというカビ毒が農産物に付着していたり、有毒な魚類が混入していたりといったものです。

毎年、これらの割合は大きくは変わっていません。

──輸入食品の品目別では、どのようなものに違反が多いのですか?

鮫島 穀類などの農産食品に違反件数が多く347件でした。そのうち穀類によるものが161件で、中でもトウモロコシは102件と突出していました。確定的なことは言えませんが、水濡れによるカビで違反となる件数が多いと考えられます。

他には、水産動物加工品(魚類、貝類を除く)の違反件数も全体の中では多く139件でした。このうち84件が冷凍食品で、微生物の規格基準を超えていた事例が主立ったものでした。


BtoBプラットフォーム受発注

執筆者プロフィール

漆原 次郎(フリーランス記者) 

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。

<記事提供:食の研究所
JBpress、現代ビジネス、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインの4つのビジネスサイトが共同運営する「食」の専門ページ。栄養士が勧める身体にいい食べ方、誰でも知っている定番料理の意外な起源、身近な食品の豆知識、食の安全に関する最新情報など硬軟幅広い情報を提供。
食の研究所はこちらhttp://food.ismedia.jp/

食の研究所  バックナンバー


メルマガ登録はこちら
フーズチャネルタイムズ 無料購読はこちら