食の研究所

後を絶たない健康食品の被害、 消費者庁が管理強化へ

白田 茜(フリーランス記者)  2014年05月21日

日常生活に浸透している健康食品。いまや、約6割の消費者が健康食品を利用しており、50代以上の約3割がほぼ毎日利用しているという。

そうした中で、消費者庁は、健康食品の機能性表示を解禁するとともに、企業に健康食品の被害を報告する制度を導入する方針だという。これまで企業から直接、消費者庁に被害を報告する仕組みはなかった。背景には何があるのか。新制度の導入とともに、私たちがこれから健康食品とどうつきあっていくべきか、考え直してみたい。

義務づけの背景には多発する健康被害

健康食品の被害報告制度を導入する方針が明らかにされたのは、2014年4月4日に消費者庁が開催した「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」第4回会合。いまのところ報告の義務化は決定されてはいないが、何らかの強制力を持たせる方針だ。

今回、企業に報告を義務づけようとする背景には、食品の機能表示の解禁がある。「お腹の調子を整える」など機能表示は、「特定保健用食品(トクホ)」と「栄養機能食品」のみに認められてきたが、それ以外の食品にも解禁しようというのだ。

以前の記事「『怪しい』健康食品がますます増える? 消費者保護と逆行する機能表示広告の緩和」でも書いたように、機能性表示の解禁には懸念もある。健康被害が後を絶たないからだ。

消費者庁の「事故情報データバンク」によると、健康食品の事故情報は2009年4月以降、約2700件寄せられているという。

今回導入が検討されている被害報告制度は、企業から健康被害の報告を義務づけ、消費者庁の情報収集体制を強化しようとするものだ。

求められる被害情報の一元化

健康被害の報告制度は現行のものもある。どう変わろうとしているのだろうか。

現在、健康食品の被害情報は、「全国消費生活情報ネットワーク・システム(PIO-NET: パイオネット)」、厚生労働省の「『いわゆる健康食品』による健康被害事例(都道府県等から報告を受けた事例)」などで公開されている。現行制度については図を参考にしてほしい。

食品表示のイメージ

 健康食品の健康被害に関する消費者からの情報収集・流通防止スキーム。点線は消費者庁が被害情報を収集する範囲 (資料出典:消費者庁、厚生労働省「食品の新たな機能性表示制度における安全性の確保について(日本の現行制度)

現在、消費者から健康被害の情報が寄せられているのは、消費生活センター、保健所、健康食品メーカーなどの事業者だ。消費者の健康被害については吐き気などの症状があり、医療機関を受診することもある。

しかし、全国の消費生活センターに寄せられている被害情報は、商品名や企業名などが伏せられており情報が不十分だ。また、「第4回食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」の資料によると、各都道府県にある保健所からは消費者庁に健康被害の情報がほとんど報告されていないのが実態だという。

厚生労働省や関係省庁と消費者庁は情報交換を行っているが、どこまで情報が共有できているかは不明だ。健康食品メーカーなどの事業者は保健所に報告の義務があるが、消費者庁へ報告の義務はない。

そこで、図のように、消費者庁に情報を集約する体制をつくろうというのだ。消費生活センターからは、商品名など銘柄を明らかにして消費者庁へ報告を徹底する。厚生労働省と消費者庁の情報共有も強化するという。保健所からの報告も徹底する。そして、新たに健康食品メーカーなど事業者からも報告を受けるようにするという。この体制の変更で、より早く正確な被害状況を把握し、消費者に注意喚起できることが期待されている。

対応方針の全体イメージ

 対応方針の全体イメージ
(出典:消費者庁、厚生労働省「食品の新たな機能性表示制度における安全性の確保について(対応方針(案)」)

食品と健康被害との因果関係を証明する難しさ

しかし、このように情報を収集するだけでは不十分だ。健康被害の原因になった食品を特定するためには、「ある食品を食べたことで健康被害が起きた」という因果関係を証明しなければならない。

人によっては、アレルギーを起こしやすい体質があり、一概に健康食品が原因と考えにくい場合もある。特定の成分を過剰に摂取してしまうと副作用が出てしまうこともある。これは摂取の仕方が問題で、健康食品が原因とは言えない。

実際、消費者庁も、食品と健康被害の因果関係を証明する難しさをこう述べている。

「医療関係者等を介さずに寄せられる危害情報等は、件数は多いものの消費者の自己評価であることから、当該食品と健康被害の因果関係を特定するという面においては、その質が不十分であり、被害情報の質・量が不十分」

米国でも、同じく因果関係の証明が課題になっている。米国では「栄養補助食品健康教育法(DSHEA)」で、サプリメントを販売する事業者に対し、15営業日内に連邦食品医薬品局(FDA)に健康被害を報告することが義務づけられている。2008年から2011年の間に、FDAに報告されたサプリメント被害の情報は6307件。そのうち 71%が企業からの報告だった。しかし、限られた情報だったり、複数の報告間で情報が不一致であることから、健康被害の情報とサプリメントとの間に確かな因果関係が認められたのはわずか3%(217件)だった。

執筆者プロフィール

白田 茜(フリーランス記者) 

白田 茜(しろた あかね) 1978年佐賀県生まれ。 佐賀県庁で食品のブランド化に関わる。その後、大学院で農業政策や食品安全に関するリスクコミュニケーションを学ぶ。
食品コンサルタント会社を経て、現在は社会的関心が高い科学ニュースについて専門家のコメントを収集しジャーナリストに提供する活動をしている。関心のあるテーマは、農業、食品流通、食品安全、リスクコミュニケーション。

<記事提供:食の研究所
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