法令対策

カシューナッツとごまが推奨項目に!“食べる楽しみ”を増やすために

田中あやか(フードコミュニケーション デザイナー)  2013年12月13日

カシューナッツとごまが推奨項目に!

最近では加工食品はもちろん、飲食店でもその対応が急務となっている食物アレルギー対応。 昨年9月には、消費者庁より「特定原材料に準ずるもの(表示推奨品目)」にカシューナッツとごまを追加することが発表され、あらためて対策に乗り出す企業様も多いのではないでしょうか。

そこで、今号では食物アレルギー情報の専門家である田中あやか氏に、食品業界や外食業界でのアレルギー対応のポイントや重要性を解説していただきます。

“食べる楽しみ”を増やすために

田中あやか
フードコミュニケーション デザイナー

 2013年(平成25年)9月20日に、消費者庁から「アレルギー物質を含む食品に関する表示につい て」という通知が出されました。特定原材料に準ずるもの(食品に含まれている場合は、その旨表示することが推奨されている原材料)として、新たにカシュー ナッツ及びごまの2品目を追加するという内容で、「平成26年8月31日までに当該2品目の表示に努める」よう求められています。この機会に食物アレル ギーの基礎知識と表示についてお伝えしたいと思います。

一部の人の話ではない

 食物アレルギーを持つ人の数は年々増えており、乳児で5~10%、小中学生では1.3%位と推測されています。ただし、これらの数字は病院にかかっている人の数から割り出したもので、症状が安定していて、病院に行かずに特定の食品を避けている方も合わせると、実際にはさらに多くの方がいらっしゃるものと思われます。

 また、食物アレルギーはお子さんに多い疾患のため、ご家族もアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)が含まれている食品を避ける、アレルギー表示がないところでは外食をしない、などの工夫をしています。さらに、ご自身やご家族にはいないという方も、ご友人、親戚、同僚など、食事を共にする機会がある人を思い浮かべると、食物アレルギーを持つ人がいらっしゃる場合も多いのではないでしょうか。このように食物アレルギーの方だけではなく、一緒にいらっしゃる方も考慮していくと、決して少ない数字ではありません。アレルギー対応を進めることは、食物アレルギーを持つ人だけでなく、その周りの方たちにも食事を楽しんでいただけることになるのです。

食物アレルギーに関するアンケート結果

回答者1000人/インターネット調査による

アレルギー表示がなぜ重要か?

 食物アレルギーの症状は、皮膚のかゆみ、じん麻疹、湿疹などが多くみられます。アナフィラキシーといって、全身に症状があらわれ、呼吸困難、血圧低下、意識障害などを起こし、時には死に至る場合もあります(起こす頻度は約12%)。現状では有効な治療方法がなく、原因となるアレルゲンを避けることが発症を防ぐ方法とされています。アレルギー表示は食物アレルギーを持つ方が食品を購入したり、外食で料理を注文する際に、とても重要な情報となるため、より多くの事業者が対応することが望まれています。

 現在、アレルギー表示について法律で定められているのは加工食品のみで、中食・外食には表示の義務はありません。しかし、昨年6月に可決した「食品表示法」の国会審議でもアレルギー表示の重要性を指摘する意見が多く出され、「アレルゲン」という言葉が初めて条文に明記されるなど、行政側でもアレルギー表示を広げていく流れが感じられます。

加工食品における食物アレルギーの表示項目

情報の伝え方、対応の方法

 アレルギー表示をする際は、「正確さ」が第一に求められます。表示が適切になされていない場合、食物アレルギーを持つ方が、アレルゲンを含む食品を知らずに食べてしまう可能性があります。ごく微量のアレルゲンでも発症する場合がありますので、調味料に含まれる成分や添加物などもよく確認をして、丁寧に表示をすることが必要です。また、表示を作成するだけで終わりではなく、その伝え方や、店頭での対応も気をつけることが大切です。下記に情報の伝え方のポイントをまとめました。

1) 消費者の視点に立って見やすい表示をこころがける
(文字は大きく。使用する○や×などのマークや色は、誤解がおきないように)
2) パンフレットやインターネット等で情報を公開する
(アレルギーを持つ方が外食を利用する際は、インターネットで事前にアレルギー情報を調べてから行くことが多い)
3) 更新日時を明記し、古い情報は必ず破棄する
(公開している情報と実際の商品の内容が異なると、誤食の原因になる)
4) 店頭でも再度確認していただくように伝える
(最新情報の確認の意味だけでなく、店頭でのコンタミネーション*1や誤配を防ぐため)
5) 必ずアレルギー表示について理解をしている従業員が対応する
(曖昧な情報を適当に答えない。分からない場合は調べてから伝える)
*1アレルゲンが意図せず混入すること

 そして、もう1つ忘れてはならないのが、食物アレルギー情報の公開や対応をする際は、「正確さ」に加えて、「誠実に」「できないこと、分からないことも、はっきりと伝える」ことも大切だということです。原産地などの好みに関わる表示と違い、食物アレルギー表示は「いのちに関わる表示」だということを、食の現場に関わるすべての方に心にとめておいて欲しいと思います。

品目追加で気をつけること

 さて、ここでカシューナッツとごまの追加に関しても触れておきましょう。どちらも「特定原材料に準ずるもの」に追加されましたが、特にごまは以前より多くの方から表示を望まれていた食材です。「健康に良い」などの理由で人気があり、多くの食品に使われている一方で、すりごまや白ごまは見た目に認識しづらいため、入っていることに気付かず間違って食べてしまうことが多い食品なのです。風味づけとしてごま油が使われている際はさらに見えにくいため、表示する側も注意が必要です。ごまについては、表示の範囲や代替表記についても発表されていますので、ぜひ確認しておいてください(下図参照)。

ごまの表示について

*1 表記方法や言葉は異なるが、特定原材料等と同一であるということが理解できるため認められている表記
*2 一般的に特定原材料等により製造されていることが知られているため、それらを表記しなくても、原材料として特定原材料等が含まれていることが理解できる表記(加工食品)のこと

 次に表示の際の注意点です。もともと「特定原材料に準ずるもの」は推奨表示のため、消費者にとっては特定原材料に準ずるものの表示がない場合、「使用しているのに表示がされていない」のか、それとも「使用していないから表示されていない」のかの判断ができません。さらに特定原材料に準ずるものが表示されてあっても、今回の2品目追加により、カシューナッツとごまのアレルギー表示がない場合は「移行期間のため、使用しているのに表示していない」のか、「使用していないから表示していない」のか、わからなくなってしまいます(下図参照)。

移行猶予期間のアレルギー表示例

 移行時期の混乱を避けるためには、表示の際に「表示対象」を明確にすると親切です。例えば、「本品は特定原材料に準ずるもの20品目を表示対象にしています」「本品は特定原材料に準ずるもの20品目のうち、鶏肉、牛肉について表示対象にしています」などの表記です。また、表形式でアレルゲンを表示している場合には、27品目分の枠を作成すれば、視覚的に分かりやすい表示になります。

楽しみを増やすための表示

 アレルギー表示は、細心の注意が必要なものではありますが、決してネガティブな表示ではありません。アレルギーを持つ人が正しく食品を選択し、食事の幅を広げるためにあります。多くの人の“食べる楽しみ”を増やすためにあるのです。
 アレルギー表示をきちんと行うためには、全原材料の把握が必要ですが、これらを整備しておくことで、特定の宗教をお持ちの方や、体質的に食べられないものがある人など、様々なニーズに応えられるようになります。原材料の情報を知りたいという一般の方の声もますます強まってきていますので、これを機に情報の整理や公開の仕方について見直してみてはいかがでしょうか。

執筆者プロフィール

田中あやか(フードコミュニケーション デザイナー) 

慶應義塾大学SFC研究所所員、ほっとFOODnet代表、食品表示管理士、食育指導士。2008年より、東京海洋大学にて、ITを用いた食の情報公開と活用について共同研究を行う。
特に食物アレルギー情報に焦点をあてた調査研究で、複雑かつ膨大な食の情報を携帯電話などの身近なIT技術を使って消費者に届ける方法を探っている。

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