食物アレルギーコラム

アレルギー情報の有効的な開示方法

田中あやか(フードコミュニケーション デザイナー)  2011年04月28日

 前回のコラムはアレルギー表示のルールについての話でした。今回はさらに一歩進んで、アレルギー情報の有効的な開示方法について考えていきます。
 商品パッケージの一括表示は、書式が法律で細かく決まっており、工夫を凝らすことは難しいと思います。そこで、今日は食品表示の欄外やホームページ、店頭表示、パンフレット等を利用し、分かりやすく情報を伝えることをお勧めしたいと思います。中でもパッケージ上の欄外表示とホームページでの開示は消費者に伝わりやすく、効果的な手段です。

パッケージ表示

 商品パッケージはスペースが限られていることが多く、詳細な情報を伝えることが難しいという面があります。しかし、商品に付帯して情報提供できるため、確実に消費者に伝えることができる手段です。最大限活用することを考えてみてください。

注意喚起表示

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 上記は、法律で決められた一括表示に追加して、欄外にアレルギー物質のみ、まとめて記載する方法です。購入する際、どんなアレルギー物質が入っているか すぐに分かり、微量でもアレルギー反応が出てしまう方に有効です。表示の際は、表示の範囲(特定原材料7品目のみなのか、25品目全て対象なのか)を明確 にすることが必要です。

アレルゲンテーブル (表形式でアレルゲンを表示)

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 同じ欄外の表示でも、表形式になっていると、複合アレルギー(何種類かのアレルギーを持っていること)の方や、「特定原材料に準ずるもの」(特定原材料7品目以外の18品目)にアレルギーを持っている方にさらに分かりやすい表示になります。

  上記2つの表示方法は「食べることができない」という判断はしやすいですが、微量なら食べることができる人や、加熱してあるアレルゲンなら問題ない人、少 しずつ食べる量を増やす治療を行っている人にとっては情報量が不足しています。「アレルゲンがどの原材料に含まれているか」というさらに細かい情報を補う ため、アレルギー表示を一括表示ではなく個別表示で記載することで「食べるための表示」になります。

ホームページ

 ホームページで情報公開をしておくと、以下のようなメリットがあります。
・ 情報量の制限がない
・ 食品パッケージ紛失時に確認できる
(一度で食べきれない食品は、パッケージを捨ててしまうことがあります)
・ メーカーのお客様センター窓口等が閉まっている休日や夜間でも情報収集できる
・ 個別表示が可能
・ 口頭でのやりとりよりも誤解や聞き漏れが少ない

 ただし、情報量が充実すればするほど、目的の情報を見つけるのが難しくなります。そこで、下記の点に気をつけながら分かりやすい構成を心がける必要があります。

トップページからリンク


 アレルギー情報はページの奥深くにあることが多いようです。せっかくの情報もたどり着けなくては意味がありません。

更新日時


 情報を更新した日時を明記しましょう。現在店頭に並んでいる商品や提供メニューと内容が違う場合、重大な事故を起こしかねません。更新日時の記載に加え、食べる前には再確認を促すことを明記しましょう。

アレルゲン一覧表 (PDF等で公開されている〇×表)

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 商品やメニューに入っているアレルゲンに〇がつけられた表は、一度にたくさんの情報を俯瞰できるメリットがあります。また、印刷をして店頭に置いておくと、不特定多数の方への閲覧用に最適です。しかし、食物アレルギーを持つ当事者の側からすると、知りたい情報以外の部分が多すぎて目的の情報を見つけるのが困難です。特に、一覧表の線がチラチラしてしまって、○がつけられている位置が分かりにくいことがあります。一行おきに色を変えるなどの工夫が必要です。
 また、表形式は「どんな原材料由来のアレルゲンか」という個別表示の表現が難しく、商品やメニューの写真が無いと情報の取り違えもしやすいという欠点を持っています。表からそれぞれの詳細情報ページに移動できるようにすると親切です。

検索機能


 商品やメニュー数が多い場合は、検索できる仕組みがあると便利です。その際、「食べられないもの」(=原材料に〇〇を使用しているもの)ではなく、「食べられるもの」(=原材料に○○を使用していないもの)の検索結果を表示できるようにすると、商品の購入につながります。

携帯ページ


 Webページを作成する際は、PC用のページだけでなく、携帯で閲覧できるページがあると便利です。

以下のような時に、携帯ページが役に立ちます。
・ スーパーの店頭で、詳しい情報を知りたい
・ 外出先で飲食店を探したい

 食物アレルギーは子供に多い疾患です。母親から自立を始め、行動範囲も広がる中高生になると、学校帰りに加工食品を買ったり、お友達と外食するような機会も増えます。しかし、事前にパソコンで検索をするのは難しく、その場で店員さんにたずねるのは恥ずかしいという意見も伺います。そんな時に、携帯で簡単に情報を知ることができると大変便利です。

用語解説


 食物アレルギーにまつわる用語は一般では聞きなれない言葉も多いため、解説を入れておくと誤解がありません。自社で扱っている食品に関連する原料や用語で分かりにくいものがあった際は、簡単に説明を入れておきましょう。

【 用語解説例 】
乳化剤:卵黄、大豆、牛脂などが原料の添加物で牛乳から作られるものではありません
コンタミネーション:食品を製造する際に意図せずアレルゲンが混入すること

デザイン


 アレルゲン情報は、食物アレルギーを持つ子供や、そのお母さんが見ることが多いものです。お母さんは、お子さんと一緒に食品表示を見て、アレルギー情報の読み方を教えることもあるそうです。アレルギー表示は分かりやいことが一番大切ですが、デザインを工夫して「食べる楽しさ」を損なわないようにしたいものです。

・ 柔らかい色づかいは好評 (平成22年調査より)

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・ イラストを用いると文字の読めないお子さんにもわかりやすい

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まとめ


 上記に気をつけながら、携帯ページで情報公開をする際の一例です。ぜひ参考にしてください。
(平成22年「食物アレルギーの子を持つ親の会」会員の協力により行ったグループインタビュー、アレルギー情報の量や内容についての調査より)。

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ポイント


・ 商品名 ・ メニュー名を大きく
・ 商品の写真を掲載
・ アレルゲンテーブル(表形式のアレルゲン表示)
・ 全原材料表示(個別表示)
・ 検索機能(食べられるもの検索)
・ 詳細アレルギー表示(由来原材料)
・ 用語解説(添加物等)

 このように積極的にアレルギー情報を開示することは、患者やその家族が便利になるだけでなく、食物アレルギーを持っていない人たちにも、企業として食の安心・安全に取り組む誠実な姿勢を発信することができます。アレルギー対応に取り組み続けることで、「きちんとしている」「食の安全・安心に気を遣っている感じ」「子供に優しい」という企業イメージにつながっていくのではないでしょうか。

執筆者プロフィール

田中あやか(フードコミュニケーション デザイナー) 

慶應義塾大学SFC研究所所員、ほっとFOODnet代表、食品表示管理士、食育指導士。2008年より、東京海洋大学にて、ITを用いた食の情報公開と活用について共同研究を行う。
特に食物アレルギー情報に焦点をあてた調査研究で、複雑かつ膨大な食の情報を携帯電話などの身近なIT技術を使って消費者に届ける方法を探っている。

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