食物アレルギーコラム

食物アレルギーの基礎知識と問合せ対応のポイント

田中あやか(フードコミュニケーション デザイナー)  2011年02月24日

 食物アレルギーとは、「食物を摂取した後に、身体にとって不利益なアレルギー症状が起こる疾患」のことです。いまさらと思うかもしれませんが、「食物を摂取した後」とは、どのくらい「後」なのか、「身体にとって不利益」とはどういうことなのか、細かい部分を改めて考えると、分からない部分も多いのではないでしょうか。連載第2回となる今回は食物アレルギーの基礎についておさらいしたいと思います。

食物アレルギーの基礎知識

◆はじめに
 食物アレルギーは「アレルギー疾患」の一種で、花粉症や化学物質過敏症などと同じようなメカニズムで起こります。花粉症の場合、マスクをして花粉の侵入を防げば、ある程度の症状をおさえることができます。それと同様に食物アレルギーもアレルゲン(アレルギー症状を引き起こす物質)の摂取を避けることが、発症を防ぐ基本となります。

◆原因となる食品
 食物アレルギーの原因となる食品は、食品衛生法で定められた「特定原材料(義務・推奨)※1」が発症の原因の93.6%を占めています(※2)。その他、ごま、米、ジャガイモにアレルギーがある人も多いようです。また、推奨表示に指定されているサケ・サバ等に限らず、魚介類全般にアレルギーがあったり、「マルチアレルギー」と言って原因物質が一つではなく、複数にわたる場合があります。

(※1)特定原材料(加工食品で必ず表示される7品目)
卵・乳・小麦・えび・かに・そば・落花生
特定原材料に準ずるもの(表示が勧められている18品目)
あわび・いか・いくら・オレンジ・キウイフルーツ・牛肉・くるみ・さけ・さば・大豆・鶏肉・バナナ・豚肉・まつたけ・もも・やまいも・りんご・ゼラチン
食品衛生法では特にアレルギーを起こしやすいとされる食品として、上記25品目の表示を義務・推奨しています。
(※2) 「原因食物は鶏卵、牛乳、小麦が多く、上位3食物で71.5%を占めた。原因食物は特定原材料等の義務7品目で82.6%(2,065例)を占め、推奨18品目を併せると93.6%(2,341例)を占めた」
(厚生労働科学研究成果データベース「食物アレルギーの発症・重症化予防に関する研究」より)

 

◆発症のタイミング
 次に、「摂取した後」については、摂取した直後から2時間以内に起こることが一番多いそうです。また、「摂取した」というと食べることだと思いがちですが、口から食べた場合に限らず、微量な粉が鼻や目に入ったり、皮膚についた場合も含みます。例えば、「飲食店を利用した際に、テーブルにパンくずが落ちていて、それを触ったために小麦アレルギーの症状として30分後にじんましんが出た」という場合もあります。

◆症状
 最後に、「身体にとって不利益なアレルギー症状」ですが、具体的にはじんましん、顔のむくみ、せき、喘鳴、嘔吐、下痢などこちらも多岐にわたっています。さらに、アナフィラキシーショックといって、呼吸困難や意識消失など、蜂に刺された時と同じような重いショック症状が起き、対応が遅れると死に至ることもあります。

 このように「原因となる物質」「発祥のタイミング」「症状・危篤度」、どれをとっても色々なパターンがあり、一概には言えないのが食物アレルギーなのです。まずは、「食物アレルギーは、人によってアレルゲンや症状がさまざま」ということを覚えておいて欲しいと思います。

把握している情報を正確に提供する

 前回もお伝えしましたが、食物アレルギーは人によって千差万別であるため、すべてのパターンを想定して対応すると、とてもとても難しくなってしまいます。そこでまず重要になってくるのが、「対応できること/できないこと」と「把握している情報」をはっきりと正確にお客様に伝えるということです。情報の行き違いが思わぬ事故につながることがあるからです。

 例えば卵を使用していない製品に対して、お客様から「卵アレルギーなんですが、卵は入っていますか?」という問合せがあったとします。以下の答えは正しいでしょうか?

A1「卵は使われておりません」
実はこの答えでは不十分なのです。より良い回答としては以下の2つが考えられます。

A2「卵は含まれていません」

A3「卵は使われておりませんが、同じ工場内で卵を使用した製品を作っています」

A2では微量のアレルゲンも入っていないことになり、卵アレルギーの人にも食べていただけます。A3ではコンタミネーション(※3)の可能性があることを意味し、微量のアレルゲンでも重篤な症状が出る方は食べることができません。
(※3)食品を製造する際に、機械や器具からアレルゲンが意図せずに混入すること

A2・A3のどちらに当たるか分からない場合は、曖昧にせずA4「卵は使っておりませんが、コンタミネーションについては分かりません」のように、分からないことについても、はっきり伝えることが大切です。これは食品メーカーだけでなく、飲食店の方も同じです。

過剰防衛はお客様を傷つける

 一番いけないのは、食物アレルギーに敏感になるあまり、過剰に防衛するような態度です。食物アレルギーの人の「食の楽しみ」の幅を狭めてしまうことになるからです。加工食品メーカーのお客様相談室への問い合わせ経験について食物アレルギーの子を持つお母さんのサークルに調査をした際、「『アレルゲンは使っていませんが、心配なら食べないでください』と言われてショックでした」とおっしゃっていた方がいました。

 お客様相談室などに電話をするのは少し勇気のいることです。そのメーカーの商品を好意的に思ったからこそ、できることなら食べたいという気持ちで問い合わせの電話をしたのに、「食べないで」と言われるのは悲しい経験だったと思います。コンタミネーションの有無を改めて確認したり、アレルゲンが含まれていない他の商品をご紹介するなど、前向きな回答があれば良かったと思います。

 逆に、「アレルゲンが入っていて食べられなかったけれど、対応をみてそのメーカーが好きになりました」という事例も伺っています。電話でアレルゲンの有無を問い合わせた際、その場では分からず、後日、担当者が調べた結果を電話してくれたのが嬉しかったのだそうです。意外と知られていませんが、食物アレルギーは年齢とともに症状が改善することが多い病気です。その時食べることができなくても、対応が好印象であれば将来のお客様になっていただけるかもしれません。

 このように、コンタミネーションを防ぐ特別な施設を作ったり、アレルゲン対応のメニューを開発するだけが、お客様が求めている「食物アレルギー対応」ではありません。「食べる/食べない」の判断をお客様ご自身にしていただけるよう判断材料となる情報をできるだけ提供することが重要なのです。そのためには取り扱う食品の情報を整理し、いつでも食物アレルゲンや全原材料の情報を引き出しておける状態にしておくこと、さらにホームページを利用してその情報を公開しておくことも有効です。

 アレルゲンを使っているというマイナスの情報に思えることでも正直に伝え、その上で出来る限りの対応をしていくことは、ただの〝アレルギー対応〟ではなく、会社の信頼度向上につながっていくのではないでしょうか。

執筆者プロフィール

田中あやか(フードコミュニケーション デザイナー) 

慶應義塾大学SFC研究所所員、ほっとFOODnet代表、食品表示管理士、食育指導士。2008年より、東京海洋大学にて、ITを用いた食の情報公開と活用について共同研究を行う。
特に食物アレルギー情報に焦点をあてた調査研究で、複雑かつ膨大な食の情報を携帯電話などの身近なIT技術を使って消費者に届ける方法を探っている。

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