食物アレルギーコラム

外食のアレルギー対応のポイント2(調査結果)

田中あやか(フードコミュニケーション デザイナー)  2011年06月30日

 前回は外食のアレルギー対応についての概略と、店内での対策を中心にお話しました。今回は、外食の食物アレルギー発症経験や望ましいアレルギー情報について、消費者に調査した結果をご紹介していきます。発症経験や発症の危険性はあるが「外食を利用したい」とお考えになっている方からいただいた貴重なデータです。データからは食物アレルギーの方が 安心して食事をするために、現場でできる対応もあれば、外食に食品を提供するメーカー側の協力が不可欠なケースも浮き彫りになっています。食物アレルギー対応は、全て「情報」が基礎になっています。現場での対応も原材料情報・規格書情報をもとにして行われます。外食とメーカーそれぞれでできることは何か?また、協力してできることは何か?の参考になさってください。

食物アレルギーの発症経験

まずは下記をご覧ください。

Q.外食で食物アレルギーを発症した経験がありますか。

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2010年「外食のアレルギー対応に関するアンケート」より。
対象:「食物アレルギーの子を持つ親の会」会員 回答:252名

 アンケート回答者の半数近くが「外食での発症経験がある」と答えています。想像よりも多いのではないでしょうか。食物アレルギーはすぐに発症することもあれば、数時間後にゆっくり発症することもあるため、お店側では把握していないケースも多々あるようです。

 

■発症に至った原因・経緯
【コンタミネーション、混入】

事例 1 うどん(そばアレルギー・卵アレルギー)
原因:うどんをそばと同じ鍋で茹でていた。また、器がきちんと洗浄されていなかったため、卵成分が残っていた。
事例 2 フライドポテト(小麦アレルギー)
原因:同じ揚げ油で小麦、乳、卵等の製品を一緒に揚げていた。救急車を依頼。
事例 3 ジェラート(乳アレルギー)
乳を含む他のジェラートとアイスクリームスクープが併用だったため、乳が付着していた。


【表示ミス、店員の知識不足】

事例 1 ハム(乳アレルギー)
原因:ハムにカゼインNaが入っていた。従業員に乳由来という知識がなかった。
事例 2 パン(乳アレルギー)
原因:パンの原材料としてバターが使われていたが、はバターを乳製品だと思っていなかった。病院で点滴治療。
その他、乳製品=牛乳のみと勘違いしている例も。
事例 3 米粉パン(小麦アレルギー)
原因:米粉のパンにグルテンを使用していた。
事例 4 醤油(小麦アレルギー)
原因:醤油の原料として小麦が使われていることを従業員が知らなかった。
事例 5 コーンスープ(小麦アレルギー)
原因:コーンスターチでとろみをつけた小麦なしのコーンスープを作ってもらっ たが、ホールスタッフがクルトンを入れてしまった。すぐに薬を飲ませた。
事例 6 みたらしだんご(小麦アレルギー)
原因:タレに使っているデンプンがジャガイモ由来から小麦由来に変わっていた。
事例 7 ベーコン(卵アレルギー)
原因:原料に卵白が使われていた。


 上記のような事故を防ぐためには、どこか一点を改善すれば良いのではありません。
各事例を単体で見ると「外食の現場が対応すればよい」「メーカーの規格書があれば防げる」と思いがちですが、このような事故は、すべて複合的に起こりうると考えてください。
 ・ 食品メーカーによる規格書情報を外食企業に共有
 ・ 生鮮等の原材料情報を管理
 ・ 本部(責任者)がメニュー情報を作成・公開
 ・ 最新情報の周知徹底
 ・ 全従業員の食物アレルギー教育
これらの情報連携と情報教育を徹底し、包括的に対応することが大切です。

外食利用の際の情報行動

次に、外食を利用する際にどのような情報行動が行われているのか、調査結果をご紹介します。

Q.アレルギー情報を得る手段の中で、「情報が信頼できる」と思うものを選んでください。

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※複数回答可

 本来、コミュニケーション手段としては人と人とのやりとりが好まれる傾向がありますが、アレルギー情報に関しては、ホームページやアレルギー一覧表の信頼度が高くなっています。以下、「信頼できる」とした理由です。

 〇 会社として公表しているものなので、正確な情報だと思う
 〇 アルバイト店員など知識のない人を途中に介さない
 〇 書面になっている方が安心

 電話での問い合わせやお店の人に尋ねるという行動に比べ、確認漏れや聞き間違いが少なく、「情報の確かさ」が高いと考えられています。

 

Q.アレルギー情報を得る手段の中で、「情報を簡単に得られる」と思うものを選んでください。

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ホームページや一覧表は、自分のペースで簡単に情報取得できる点もメリットです。
※複数回答可

Q.携帯で外食のアレルゲン情報を見ることができたら便利だと思いますか。

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 携帯サイトに関して、現状では「信頼できる」「情報取得が容易」なメディアとして選ぶ人は少ないようです。一方で、「便利だと思いますか?」という質問には多くの人が「思う」と答えています。携帯電話によるアレルゲン情報公開は、画面遷移が多く必要な情報にたどり着きにくい、公開されている情報が少ない、画面が小さいなど、まだまだ使いにくい点が多くあります。しかし、便利さの点で期待できるメディアであり今後はスマートフォンの普及で、より一層存在感が高まりそうです。

外食のアレルギー対応の必要度

Q.外食のアレルギー対応について、それぞれの項目に対して必要度を答えてください。

 

1.アレルギー一覧表の提供

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 アレルギー対応の中で、「必要」と答えた方の割合が最も多かったのが「アレルギー一覧表の提供」です。ただし、「必要」と答えた方は、「全原材料表示でないと意味がない」というコメントを添えられた方が多く、「やや必要」「どちらともいえない」と答えた方は「25品目のアレルゲンだけでは意味がないので」と書かれています。まずは25品目のアレルギー表示を第一歩として、全原材料表示を目指すことが望まれます。
2.低アレルゲンメニューの提供
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 「アレルギー一覧表」と同様、「低アレルゲンメニューの提供は最低限必要。ただ、それで十分ではない」というご意見が多いようです。低アレルゲンメニューがあることで、食物アレルギーに関心のある企業だという姿勢を示すことができます。専用メニューの提供をスタートに、徐々に対応の幅を増やすことをお勧めします。

3.メニューの個別対応

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 例えば、「サラダのドレッシングをかけないでください」「トッピングの卵を抜いてください」「乳の入ったソースを他のものに変えてください」という要望にお応えすることを「メニューの個別対応」としています。こちらは、一歩進んだアレルギー対応であるため、「必要」と答える方の割合が少し減っていますが、提供する際のひと手間で対応できることが多いので、ぜひ取り組んでほしいと思います。

4.コンタミネーション対応

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 「必要」と答える方の割合が若干減っています。コンタミネーションレベルであれば食べられる方もいらっしゃるためです。全てのメニューについてコンタミネーションを気にする必要はありませんが、低アレルゲンメニューの提供時や、特別に求められた場合には対応できるような工夫が望まれます。

5.店員の食物アレルギー教育

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 従業員に対して食物アレルギー教育を行うことは、企業からすると「かなり進んだ対応」ではないでしょうか。ところが、アンケートの結果「アレルギー一覧表」と同程度に、多くの方が望んでいることが分かりました。

 企業で「アレルギー一覧表」や「低アレルゲンメニュー」に取り組んだとしても、各店舗で提供するスタッフ一人一人に知識がないと、誤った情報を伝えてしまったり、アレルゲンが混入したりする危険性があります。しかし、全従業員に対して「食物アレルギー発症のメカニズム」や「食物アレルギー表示のルール」教育を徹底することは、理想ではあるものの現実的には困難かと思います。

 まずは「ホームページやアレルギー一覧表をもとに、お客様に正確な情報を伝える」ことを基本姿勢としてください。その上で、本コラムの過去記事を参考に対応のポイントを押さえていってほしいと思います。

外食のアレルギー対応のポイント

執筆者プロフィール

田中あやか(フードコミュニケーション デザイナー) 

慶應義塾大学SFC研究所所員、ほっとFOODnet代表、食品表示管理士、食育指導士。2008年より、東京海洋大学にて、ITを用いた食の情報公開と活用について共同研究を行う。
特に食物アレルギー情報に焦点をあてた調査研究で、複雑かつ膨大な食の情報を携帯電話などの身近なIT技術を使って消費者に届ける方法を探っている。

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