食の研究所

ミスの起きない“仕組みづくり”が不可欠 アレルギー事故を繰り返してはならない

白田 茜(フリーランス記者)  2013年03月27日

アレルギーに対する誤解を解く

 アレルギーに対する知識がないと、頭ごなしに「ただの偏食」「好き嫌いしてはダメ」「面倒だから関わりたくない」と忌避しかねない。

 アレルギーをやみくもに怖がらず、知識を得て、事故を限りなくゼロに近づけるような努力を重ねることが大事だろう。原因物質が同じでも、人によって症状が異なるので、一人ひとりに添った対応策を考え、実行することが不可欠となる。

 また、意外と知られていないが、アレルギーの対応は食事だけでは不十分であるということだ。特に重篤なアレルギーの場合、接触やくしゃみなどを介して、 皮膚や目の粘膜、口などからアレルギー原因物質が入ったら発症してしまうこともある。手を拭くタオルやコップを隔離する、こまめに清掃を行い食事後に歯磨 きや手洗いを徹底するといった、環境面での配慮が欠かせない。

 なによりの予防法は、原因物質を知り、避けることである。血液を採取し特定のアレルゲンに対する反応の強さを見る「血液検査」、原因と考えられる食物を 数週間除去して様子を見る「除去試験」、皮膚にアレルゲンを直接貼って反応を見る「パッチテスト」、アレルゲンを少しだけたらした針で皮膚の表面を引っ掻 く「スクラッチテスト」、そして、アレルゲンを少量飲んで反応を見る「負荷試験(チャレンジテスト)」などの検査方法がある。

 しかし、アレルギーには解明されていないことも多い。食べ物にはアレルギーはないが、食べた後に運動すると強いアレルギー症状が出ることもある。

 また、これまでアレルギーがなかった人でも何かのきっかけで発症してしまうこともある。例えば、小麦粉が含まれている石鹸で顔を洗って、目のかゆみやく しゃみ、顔面が腫れるなどアレルギーと見られる症状が出たという事例がある。これは、毎日洗顔することで原因物質の小麦粉の摂取が皮膚に少量ずつ重なって いった結果、体が小麦粉を「異物」と判定したためアレルギーになってしまうものと考えられる。石鹸でアレルギーが発症した後、小麦粉を食べても発症してし まうこともあるという。

 現在では、アレルギーに対する治療法は、「完全に原因物質を除去するのではなく、少しずつ摂取させて耐性を獲得していく」という考え方が主流になってき ている。ただし、アナフィラキシーの症状が出たことがある人には、こうした治療は行われない。原因となるアレルゲンを除去することが最も重要なためだ。

企業のアレルギー対応の難しさ

 給食以外での状況はどうなっているだろうか。

 国民生活センターに寄せられたアレルギーの相談事例は、2010年には962件だったが、2011年には4517件と急増。2012年11月30日時点 では1377件だという。寄せられた相談には、食事以外で発症したケースも多い。「シャンプーにアレルギー原因物質のキウイが入っていた」などだ。もとも とアレルギー体質ではなかった人が何かのきっかけで発症することもあり、企業側の対応は難しさを増している。

 外食での表示義務は現在ない。しかし、国民生活センターに寄せられる外食に関する相談件数は増加している。相談の中には、アレルギー以外の相談も含まれているが、「卵不使用と表示されていたが卵アレルギーが出た」など、アレルギーの報告例が目立つという。

 アレルギー表示を自主的に行ったり「低アレルゲンメニュー」を出したりする外食チェーンも増えている。しかし、前回記事「アレルギー表示はいつまで不十 分なのか」で書いたように、今のところ、消費者がレストランを利用する際に「店員にアレルゲンが入っていないかどうかを確認する」他にすべがないのが実状 だ。

アレルギーと共に生きる

 都内に住む乳アレルギーを持つ子の母は、外食の難しさについてこう語る。

 「乳アレルギーは、牛乳さえ排除すれば大丈夫と考える人が多いのではないか。バター、スキムミルク、コンデンスミルク、ごく微量ながら乳糖にも乳が含ま れている。外食ではこれらを完全に除去するのは難しい。不安なときは、事前に店に問い合わせ弁当を自宅から持ちこむようにしている」

 外食を提供する側にも「客の注文などに応じて様々なメニューを手早く調理する中、専用の器具で調理するなどしてコンタミネーションを防止するのは困難」という現実的な意見がある。

 それでも情報提供については工夫の余地があるだろう。その日に提供するメニューで、何の食事にどのアレルゲンが含まれているか、成分の一覧表を作って、誰が見ても一目で分かるようにしておくなどの方法も考えられる。

 ただ、季節や日替わりなど短期間でメニューが変わり、調達先の変更も多い外食にはこういった対応はかなり負担が高いのも事実だ。

 アレルギーを持つ人でも安心して生きられる環境をつくる上では、「原材料をどこまで詳細に伝えることができるか」という情報開示の課題に行き着く。含ま れているアレルゲンが分かれば避けることもできるからだ。消費者と事業者が互いに現実的な妥協点を探っていくことが必要になってくるだろう。

 また、給食については、今回の事故に学び、誤食を防ぐための仕組みづくりがどこまで徹底できるかが課題だ。いま一度、学校と保護者で再考することが必要だろう。


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執筆者プロフィール

白田 茜(フリーランス記者) 

白田 茜(しろた あかね) 1978年佐賀県生まれ。 佐賀県庁で食品のブランド化に関わる。その後、大学院で農業政策や食品安全に関するリスクコミュニケーションを学ぶ。
食品コンサルタント会社を経て、現在は社会的関心が高い科学ニュースについて専門家のコメントを収集しジャーナリストに提供する活動をしている。関心のあるテーマは、農業、食品流通、食品安全、リスクコミュニケーション。

<記事提供:食の研究所
JBpress、現代ビジネス、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインの4つのビジネスサイトが共同運営する「食」の専門ページ。栄養士が勧める身体にいい食べ方、誰でも知っている定番料理の意外な起源、身近な食品の豆知識、食の安全に関する最新情報など硬軟幅広い情報を提供。
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