食物アレルギーコラム

外食のアレルギー対応のポイント

田中あやか(フードコミュニケーション デザイナー)  2011年05月26日

 食物アレルギーがある方にとっても、外食は生活になくてはならないものです。自宅でアレルギー除去食を調理されている方でも、外出や旅行をする際や、ハレの日や休日、会食等で外食を利用したいシーンはたくさんあります。しかし、「食物アレルギー除去中の保護者に対する食生活のQOL」に関する調査結果では、72.5%の保護者が何らかのストレスを感じており、その原因は、第1位が「除去食の献立」、第2位が「外食のメニュー選択」、第3位が「子供の栄養状態」と、外食に対する高いストレスが明らかになっています(※1)。
 そこで今回は、消費者の声や事例などを交えながら、外食における食物アレルギー対応のポイントをまとめていきたいと思います。外食や外食向けに加工食品を作っているメーカーの方はもちろん、食品に関わる企業の方はぜひ参考にしてください。

(※1)出展:池田有紀子, 今井孝成, 杉崎千鶴子, 田知本寛, 宿谷明紀, 海老澤元宏、2006「食物アレルギー除去中の保護者に対する食生活のQOL調査および食物アレルギー児の栄養評価」『日本小児アレルギー学会誌』 Vol. 20 , No. 1 pp.119-126 )

情報提供

情報提供の場は、店内だけでは不十分。上手にITを活用する

 2010年に「食物アレルギーの子を持つ親の会」の方に「外食のアレルギー対応に関するアンケート」を行いました。その中で、「外食を利用する際、アレルギー情報はどのタイミングで調べますか?」と尋ねたところ、ほとんどの方が「事前に調べる」と答えています。

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  レストランの客席に案内されてメニューをチェックした結果、すべてにアレルゲンが使われていたとしたらお店を変更しなくてはなりません。しかし、一度入ってしまったお店で「やっぱりやめます」とは言いづらいものですし、お子さんにアレルギーがある場合、親御さんとしては食べられるメニューがあるお店にスムーズに入店したいはずです。そこで、有効なのがWebサイトや携帯サイトでの情報提供です。Webサイトは外出前に気軽に自宅でチェックができ、また携帯サイトは外出先でも簡単に確認できます。さらに今後は、携帯用ゲーム端末やスマートフォン、タブレットPCへの対応も期待されています。

 IT機器を活用した情報提供は、利用する側の利便性が高まるだけでなく、内容の更新がしやすいという特徴もあります。紙の印刷物ではメニューや原材料が変更されるたび、印刷をし直さなければなりません。実際に提供している内容と資料の内容に相違があると事故の原因になりますので、IT機器を活用して常に最新の情報を提供できるようにしておくとよいでしょう。

 

店員による回答は注意が必要

 お店に入ってメニューにアレルゲン情報が記載されていない場合や、疑問点がある場合は店員に尋ねることになります。店員から直接アレルギー情報を聞くことは安心につながる反面、対応した店員の食物アレルギーの知識レベルが分からないとその回答を信頼できないということもあります。また、口頭でのやりとりでは行き違いが起こったり、混雑時には声をかけづらいなどデメリットもあります。
 以下は、店内の対応で起こりえる代表的な事例です。

1)「卵アレルギーなのですが、このラーメンに卵は入っていますか?」「いいえ、入っていません」というやりとりがあった。トッピングとしては使用していなかったが、仕入れている麺のつなぎに卵が使われていることを知らなかった。
⇒店内調理で卵を使用していなくても、加工食品を利用している際には、原材料を確認する必要があります。

2)「卵なしで作ってください」と頼まれたが、アレルギーがあるとは聞いていなかった。調理時に誤って卵を盛り付けてしまったため箸で卵を取り除いたものを提供したところ、卵の成分が微量に残っていたため発症してしまった。
⇒「卵なしで作ってください」とお客様から言われた場合、食物アレルギーがあるのか、単に卵が苦手なのか判断しづらいと思います。食物アレルギーがある場合でもアレルギーがあることを言い忘れていることがありますので、必ず確認が必要です。食物アレルギーがあると、コンタミネーション(意図せぬ混入)レベルでも発症する場合がありますので注意してください。

 このような行き違いを防ぐには、本部や本社で確認している資料(アレルゲン情報)を用意しておくことが有効です。資料があるとアレルギーの方に分かりやすく、短時間でたくさんの情報を提供できます。また、従業員の側にとっても自信をもって回答できるため、サービスの質の向上につながります

アレルギー対応メニュー

お子様向け低アレルゲンプレート

 特定原材料等を除去した低アレルゲンプレートがメニューにあると、とても助かるという声をよく伺います。ただし、特定原材料などのメジャーな食材以外にアレルギーがある方も多いため、低アレルゲンプレートさえあれば対応は完璧、というわけではありません。また、小学校高学年になってくると、子供向けメニューでは量が少なかったり、頼みづらいこともあるようです。

素材をいかした調理

 調味料やソースにはたくさんの原材料が使われることが多いので、アレルギーの方は注意が必要です。調理の工程が多いものもコンタミネーションのリスクが高まります。ある程度大きなお子さんや、大人でアレルギーのある人には、素材をいかしたシンプルなメニューが喜ばれます。
・塩だけで味付けしたステーキ
・トッピングは自分で後のせするうどん
・ドレッシングは別添の温野菜サラダ

 このように、シンプルでアレルゲン除去のしやすい工夫があると、「アレルギー対応メニュー」を特別に用意しなくても、アレルギーの方が食べやすいメニューになります。また、個別対応する際に特別に食材を足すことはできなくても、「卵を抜いて」「バターはつけないで」などの「食材を減らす」リクエストに柔軟に対応できると親切です。

コンタミネーション防止

調理時の工夫

 コンタミネーションを防ぐには、アレルギー対応専用の調理器具を使って調理する必要があります。フライパンや菜箸などについたアレルゲンが混入してしまう危険があるからです。専用の調理場や調理器具を用意するのが難しい場合は、フライパンにクッキングシートを敷いたりホイル焼きなど、他の食材と触れないような工夫で対応することもできます。

配膳の注意点

 せっかくのアレルギー対応メニューも、配膳時にコンタミネーションがあっては意味がありません。以下、配膳時のポイントです。
・椅子やテーブルを丁寧に拭く
・専用の食器を使う(使い捨ての食器も可)
・専用のカトラリーを用意(使い捨ても可)
・配膳の手違いを防ぐため、責任者を決める

食物アレルギー対応を楽しい思い出に

 小さなことであっても要望を聞いてもらったり、ちょっとした心遣いを感じられると顧客満足度はあがるものです。食物アレルギーの方へのヒアリングで印象に残ったものをご紹介します。
・事前にレストランに相談をしたら、メニューをFAXで送ってくれた。
・セットメニューのデザートにアレルゲンが含まれていたのでつけないように頼んだら、他のデザートに変更してくれた。
・アレルギーがあることを伝えたら、アレルゲンが入っていない他のメニューを教えてくれた。
・嫌な顔をせずに話を聞いてくれて、親身に対応してくれた。
・「こういう風にすれば食べられますか?」と向こうから聞いてくれた。

 こうして特別な道具や深い知識がなくてもできることでも、食物アレルギーを持つ方にとっては、外食の利用に前向きになるきっかけとなります。「楽しかったね。また外食したいね」と言っていただける対応ができるよう、ぜひ今回のコラムを参考にして、できるところから始めてみてください。

参考資料

食物アレルギーを持つ患者とその家族に外食をしたいというニーズはあるものの、メニューについての情報が不十分である、あるいは、店舗により情報提供の方法にばらつきがあり解釈に時間がかかるため、メニューを選択しにくい実態を明らかにした。また、顧客自身で判断しかね、来店時に尋ねても、食物アレルギーに関する店員の知識不足や、不確実な点を確認しない曖昧な回答によって、不安や落胆が生じていることを報告した。
斉藤恵里依・小川美香子、2009「外食産業における食物アレルギー対応の効果的施策」経営情報学会2009年春季全国研究発表大会予稿集

執筆者プロフィール

田中あやか(フードコミュニケーション デザイナー) 

慶應義塾大学SFC研究所所員、ほっとFOODnet代表、食品表示管理士、食育指導士。2008年より、東京海洋大学にて、ITを用いた食の情報公開と活用について共同研究を行う。
特に食物アレルギー情報に焦点をあてた調査研究で、複雑かつ膨大な食の情報を携帯電話などの身近なIT技術を使って消費者に届ける方法を探っている。

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