食品表示コラム

「食品表示一元化検討会 総括~(3)最新動向と今後の食品表示」

井上 慎也(株式会社ラベルバンク)  2012年12月19日

 2012年1月より食品表示一元化検討会について連載してきた本コラムも、今回で最後となります。最終回では一元化検討会後の動向や食品表示のあり方などについて考えてみたいと思います。

 食品表示一元化検討会では、「栄養表示の義務化」のように具体的な決定がなされたものもあります。しかし8、9回目のコラムで取り上げた「原料原産地表示」のように一元化検討会の中では決着が付かず、先送りとなったものもあります。これに対し、これまで食品表示について取り組んできた消費者団体等からの意見・要望を受け、下記の議論の場が設けられました。

2012年10月24日 「新食品表示法(仮称)に関する消費者団体とのワークショップ
2012年11月22日 「新食品表示制度についての意見募集・意見交換会

これらの動きを受けてなのか、2012年11月22日の早朝に、メディアから「消費者庁が原料原産地表示義務化対象の拡大を目指す方針を決めた」と報道されました。内容は、『「現在はJAS法に基づき一部の加工食品だけが対象だが、消費者が商品を選ぶための新たな基準を作り、パンや野菜ジュース、菓子類など身近な食品のほぼ全てに原産地表示を義務化できる環境作りを目指す」と、原料原産地表示の義務化拡大に向けた考えを示した』と、ありました。
 同日に開かれた「新食品表示制度についての意見募集・意見交換会」でもこのニュースが取り上げられたようですが、方針決定までは進んでおらず、どうやら報道の早合点だったのではないかと見られています。けれども、消費者庁長官は「原則的には全ての加工食品に原料原産地表示をすべき」といった発言を行うなど、今もなお議論が大きなうねりを上げる様相を見せています。

理念に基づいた意思を

 今回の原料原産地表示義務化の件も含め、新しい方針を立てる際に気にしていただきたいのは、それが「新しい食品表示制度」の目的に基づかれているかという点です。
 「新しい食品表示制度」の理念には「消費者の選択の機会の確保」も含まれるため、今回のように、話題となっている「原料原産地」にスポットが当てられるのは仕方ないことだと思います。ですが、この「原料原産地」以外にも消費者の要望は「添加物の物質名までの表記」や「遺伝子組換え作物の一律表示化」など多種多様です。これらを皆一律に義務化していたのでは以前の制度と変わらず、また本来必要な安全性に関わる情報の埋没化が懸念されます。

能動的な情報提供を促すには・・・

 また、表示の義務化を推し進めることは、意図しないものも含め、表示のミスがあった場合、ペナルティーが生じることとなります。そうすると、食品事業そのものをリスクと感じ、将来的に業界そのものの硬直を招いてしまう側面もあるのでないかと思います。
 例えば、原料原産地を例にとった場合、季節や年度によって風味・食感が変わるため、よりよい品質提供のため常に複数の産地の原材料を使用している場合も多く、毎回パッケージに原料原産地を変更して記載するというのは困難です。なにより意図しないところで表示違反を招く可能性があります。そのほかにも、原材料によっては配合に熟練を要するために情報が原料メーカーが社外秘密としているなど、情報を取得し難い場合もあります。

 では、「原産地等の表示が難しい。でも品質はいいから食べて欲しい」と思う事業者と、「おいしいから買っているけど、もっと詳しくこの商品を知りたい」と思う消費者は、どのようにすればお互いの要望を満たすことができるでしょうか。

 おそらく事業者側からと消費者側からの2つのアプローチが必要なのではないかと思います。 事業者は「自主的な品質表示基準」の設定をすることです。それぞれの情報を求める人が能動的に情報を得ることができれば、事業者にとってもこれらの情報はリスクではなくプロモーションの一環になるのではないでしょうか。

 また、消費者側からも事業者の定めた「自主的な品質表示基準」の意見を書面などで集め、各企業に対しフィードバックし、改善を求めてはどうでしょうか。 消費者団体としてはこうした取り組みは、過去になかったわけではありません。社会問題が起こった際には企業にヒアリングし、結果を公開したりもしてきました。つまりこれを食品表示という側面で継続的に行うということです。改善を求めるということは、改善してもらえればまた買いたいという意思表示なので事業者も期待に応えようと努力をするでしょう。結果的に消費者、事業者双方のメリットになるのではとないかと思います。

 いずれにしても、規制で固めてしまうと最終的に招くのは、製品の画一化による業界競争の停滞化でないかと懸念しております。そうではなく食品を取り巻く環境として目指していただきたいのは、私達が買い物をするときに色々な商品が並び、新商品もたくさん発売され、その中から食を楽しむことができる環境です。そのためには、まず「つくる人を増やすこと」が大切と考えます。いずれにしても、「こんな食品をみんなに食べてもらいたい」と将来的に食品業界を目指す人たちがもっと増えるような環境づくりを期待しております。

 最後までご覧いただき誠にありがとうございます。食品表示一元化検討会という食品表示の最前線に触れさせていただき、私の中でも食品表示が企業や消費者に対し与える影響力を再確認する機会であったように感じます。拙筆ではありましたが、少しでも皆様のお役に立てる情報を提供できたのであれば、幸いです。
それでは、1年間に渡りお付き合いいただきましてありがとうございました。

執筆者プロフィール

井上 慎也(株式会社ラベルバンク) 

株式会社ラベルバンク食品表示グループ 所属 。
東京農業大学 応用生物科学部 卒業。東北大学大学院 生命科学研究科 博士前期課程 修了。大学院修了後、株式会社ラベルバンクに入社。食品表示グループの実務担当者として、日々食品表示パッケージのチェックや食品表示作成代行に従事している。

<株式会社ラベルバンク>
「食品の品質情報は見せた方が得」「分かるから、安心」を企業メッセージに、「食品表示作成・チェックサービス」では、食品表示の知識を軸に、分かりやすく気配りのできる食品表示を、「プロモーションサービス」では商品が選ばれるための販促企画から仕組み作りまで、「食品開発支援サービス」ではおいしくて体にいい商品を、愛情こめて提供いたします。

 

食品表示コラム バックナンバー

関連タグ

メルマガ登録はこちら

経営者インタビュー番外編 『思い出の一皿』

フーズチャネルコンテンツガイド