食品表示コラム

「食品表示一元化検討会 総括~(2)表示事項の優先順位と表現方法」

井上 慎也(株式会社ラベルバンク)  2012年11月28日

 前回では、新制度の目的の設定により、今後は食品表示に「優先順位」をつけて表示基準の改正ができるようになるのではないかという点をご紹介いたしました。今回は、この優先順位と表現方法についてより深く掘り下げてみたいと思います。

今後、表示の議論のうえで考えられる指標

 以前、本コラム「原料原産地表示をめぐる議論(後編)」でもお伝えしておりますが、食品表示には「安全性」と「商品選択」の2つの役割があります。今回のPDFファイル食品表示一元化検討会報告書では、新しい食品表示制度の目的として、「安全性」がより重要視されることになりました。
そして、食品表示の優先順位を考えるうえで、個人的には「安全性」と「商品選択」といった「食品表示の役割」のほかに、どの範囲までの表示が必要となるかといった指標として、

「数値化に意味を持つ要素」と「含まれていること自体が重要な要素」

といった「情報の属性」も併せて考えていく必要があるのではと考えています。

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 もろろん、「安全性」と「商品選択」が優先順位に直結する要素ではあるのですが、この「情報の属性」に着目した場合、「何%以上含まれた場合は記載する」や「実際に含まれているすべての量を記載する」など、安全性を考慮し、記載する範囲を定めたうえで優先順位を考えることができるのではないかと思います。

 まず、比較的食品の「安全性」に関連した情報である食品添加物を例にしてみましょう。中間加工品を使用して食品を製造した場合、中間加工品から持ち越された食品添加物については最終製品に影響がない限り、記載を省略することが可能です。(※キャリーオーバー)しかし、「最終製品に影響がない」という内容に関しては、明確な表示事項の境界線は引かれていません。実際、最終製品に食品添加物が比較的多量に含まれていたとしても、表示から確認することができない可能性があるというのが現状です。また、キャリーオーバーの省略からアレルギー表示漏れが起こるといったこともしばしば見られています。
 しかし、持ち越し添加物の中には最終製品中の含有量0.001%以下といったようなものもあり、大半は「最終製品に影響がない」、つまり「安全性」に関わる要素からは外れる情報となります。これを「すべてを表示する」となると有意な情報が埋没してしまう可能性があり、あまり有益な情報とは言えません。

 こういった事態を解消する方法として、キャリーオーバーから「安全性」に関わる要素を抽出し、表示を省略できる範囲を明確化する必要があるのではないでしょうか。例えば「中間加工品からの持ち越しであっても最終製品中に○%以上含まれる場合はキャリーオーバーとしての省略を認めない」といったような「数値基準」を設けることで、安全性の基準ができ、優先順位がつけられると考えられます。

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 だたし、この方法では、ルールを細分化してしまうので、消費者への情報周知や事業者の持続的な実行性を考えると、慎重に取り組む必要があります。しかし、このような視点は新たに表示事項を考える必要が出た場合の表示範囲の策定に必要となるでしょう。また、現行の表示方法にもさらに議論の余地が出てくるのではないかと思います。

表示事項の表示方法について

 表示方法については、現在消費者庁で公開されている「PDFファイル新食品表示制度のポイント(イメージ)」でも「表示基準レベルでは一元化による表示義務の範囲の変更はない」と記載があります。ですが、その表示方法が新制度の目的に沿わないものであれば、変更を考える必要があると思います。

 現在、消費者庁のリコール情報サイト国民生活センターの回収情報などの食品表示に関わる回収情報の多くが、アレルギー表示の欠落および賞味期限(消費期限)の表示ミスによるリコール・回収情報で構成されています。こうした「食品の安全性確保」という観点では、アレルギー表示は今後ますます焦点が当てられることになると思います。そういった中で、現行の表示方法は、「原材料名」の中に「アレルギー表示」が同居している形となっているため、新制度の目的に沿った表示とはもはや言えなくなっているのではないでしょうか。

 アレルギー表示で、現在よく見られる情報の形態として、表(アレルゲンテーブル)やイラストによる表示が挙げられます。これは事業者側の取り組みや消費者の声が形となり、非常にわかりやすい表示方法であると思います。しかし、PDFファイル現行の表示制度では原則として一括表示枠の原材料欄内にアレルギー表示を併せて記載することになっています。表やイラストによって情報が伝えられている場合であっても、原材料欄に記載する必要があります。今後は独立したカテゴリーで考えないといけないのかもしれません。

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(※ アレルゲンテーブルが正確であっても、例えば一括表示中の「(原材料の一部に大豆を含む)」の表示が欠落していた場合は、表示違反を問われる場合があります。)

 このように、表示する項目やその範囲の優先順位を現行の表示方法に照らし合わせた場合、内容が重複するといったことも考えられます。今後、表示のムダを省くためにも、表示の優先順位や新制度の目的に合わせた表示方法を考える必要もでてくるのではないかと思います。
 しかし、食品表示において、重視されることは「情報が正確であること」と「情報が確実に消費者に伝えられること」の2点に尽きると思います。
 他にも、これまで制度によって画一化してきた「記載方法」について、今後議論の対象となり、情報の正確さが確保できるのであれば、表示に柔軟性を持たせることや内容変更につながることを期待したいと思います。

 こうした食品表示に関してはみなさんが安全に食生活を送るために、不可欠な情報も多く含まれるため、今後その重要性がさらに大きくなるであろうことが予想されます。新制度を運営する行政は表示方法を、そして事業者はその管理体制を見直す必要が出てきているのではないでしょうか。

執筆者プロフィール

井上 慎也(株式会社ラベルバンク) 

株式会社ラベルバンク食品表示グループ 所属 。
東京農業大学 応用生物科学部 卒業。東北大学大学院 生命科学研究科 博士前期課程 修了。大学院修了後、株式会社ラベルバンクに入社。食品表示グループの実務担当者として、日々食品表示パッケージのチェックや食品表示作成代行に従事している。

<株式会社ラベルバンク>
「食品の品質情報は見せた方が得」「分かるから、安心」を企業メッセージに、「食品表示作成・チェックサービス」では、食品表示の知識を軸に、分かりやすく気配りのできる食品表示を、「プロモーションサービス」では商品が選ばれるための販促企画から仕組み作りまで、「食品開発支援サービス」ではおいしくて体にいい商品を、愛情こめて提供いたします。

 

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