食の研究所

薬や健康食品と「トクホ」は何が違うのか 謎多き「トクホ」の正体に迫る(前篇)

漆原 次郎(フリーランス記者)  2013年06月26日

 昼休み、「さっきの定食ちょっとボリュームありすぎたな」などと思いながら、コンビニエンスストアに入 る。飲み物の棚に並んでいるのはソフトドリンクの数々。そこで目に飛び込んでくるのは、健康そうにバンザイをしている人のシルエットが刻まれた「特定保健 用食品」略して「トクホ」のマークだ。迷わずにトクホのマークがついている食品に手を伸ばす人も多いことだろう。

 実際、トクホは飲料を中心によく売れている。2012年4月の発売から1年が経つ「メッツコーラ」(キ リンビバレッジ)は2013年3月中旬、累計販売本数で1億7000万本を突破した(480ミリリットル換算、同社発表)。一方、2012年11月に発売 された「ペプシスペシャル」も、発売からわずか2週間たらずで130万ケースの出荷を記録(同社発表)。この4月には、トクホの「ヘルシアコーヒー」(花 王)が発売され、“トクホ熱”はまた高まりそうだ。

 マークが目に飛び込めば無条件に手を伸ばしてしまいそうになるトクホの数々。「脂肪を消費しやすくする」などと効果が書かれてはいるが、その効果がどのような仕組みでどのくらい表れるのか、といったことまではあまり知られていない。

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特定保健用食品(トクホ)のマークが付いた飲料の数々。

 そこで、国立栄養・健康研究所情報センター長の梅垣敬三氏に、トクホの謎を投げかけてみることにした。同センターは「『健康食品』の安全性・有効性情 報」というサイトで、企業から収集したトクホの製品情報273件(2013年4月現在)を含む、健康食品の安全性や有効性を総合的に伝えている。

 前篇では、トクホとはどのようなものであるのか、誰がどうやってその食品をトクホであると決めているのか、サプリや薬とはどう違うのかといったことを明確にして、トクホの正体に迫っていきたい

 後篇では、私たちがコンビニエンスストアなどでよく目にする「メッツコーラ」や「ペプシスペシャル」、そして新たに注目を浴びている「ヘルシアコーヒー」などの具体的なトクホに焦点を当てて、その効果のほどや接し方などを梅垣さんに聞くことにしたい。 。

対象は成分でなく食品そのもの

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梅垣敬三さん。独立行政法人国立健康・栄養研究所情報センター長。薬学博士。1985年、静岡薬科大学大学院博士課程修了、1986年、国立栄養研究所(現・独立行政法人国立健康・栄養研究所)入所。同研究所サイト内の、特定保健用食品の製品情報を含む「『健康食品』の安全性・有効性情報」の管理運営などを行っている。1994年に日本食品衛生学会奨励賞、2003年に日本栄養改善学会賞を受賞。

──特定保健用食品(以下、トクホ)が、誕生した背景はどのようなものでしょうか?

梅垣センター長(以下、敬称略)かねてから大学研究者などが食品に含まれる体調調節作用を持つ成分をいろいろと研究をしており、特に1980年代中頃に研究が進みました。

 しかし、食品の成分に体調調節作用があるといっても、量が少なければ効果として現れません。また、動物を対象にした実験結果が人にも当てはまるとは限りませんし、試験管内での実験結果が食品にそのまま反映されるとも限りません。

 企業などがこれらの様々な情報を発信すると、何が本当なのかが分からなくなり、情報の混乱が起きてしま います。とはいえ、中には食べたら効果のあるまともな食品も実際あるわけです。こうして、まともなものとそうでないものを分けた方がよいという考え方が出 てきました。そこで誕生したのが「特定保健用食品」(以下、トクホ)の制度です。

──トクホを一言で表すと、どうなるでしょうか?

梅垣 その食品を摂ったときにその効果が期待できる、という表示が認められたもののことを言います。大切なのは、「食品に含まれる成分」でなく「食品そのもの」がトクホの対象となっている点です。

 食品には、効果の期待できる成分の他、様々な成分が入っています。それらが共存すると相互作用を起こし て効果がなくなる可能性もあります。消費者が手に取る食品そのものに対して、本当に効果が期待できるのかを見なければなりません。その観点で認められたの が、トクホです。

消費者庁が「有効性と安全性の科学的根拠がある」と表示を許可

──誰がどのようにすると、その食品がトクホになるのでしょうか?

梅垣 まず、トクホの表示を得たい食品メーカーが、その食品を用いて 人などに対する試験を行い、望んでいる表示の効果が出ているか、また安全性は保たれているかを確認して、それを示した資料を作ります。その資料は、例え ば、査読を経て科学雑誌に掲載される論文のようなものです。食品メーカーがその資料を携えて消費者庁に申請します。

 消費者庁は、申請のあった食品の効果と安全性を、内閣府の消費者委員会に諮問します。この消費者委員会 が食品の効果を確認し、さらに新規成分を含む食品などについては安全性の審査を内閣府食品安全委員会に依頼します。そして改めて、消費者委員会が安全性と 効果があるかを判断します。その後、消費者委員会は今度は厚生労働省との間で医薬品の表示との抵触がないように調整します。

 これらのプロセスを経て、最終的に消費者庁が申請者の食品メーカーにトクホの表示の許可を出します。

執筆者プロフィール

漆原 次郎(フリーランス記者) 

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。

<記事提供:食の研究所
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