法令対策
井上 慎也(株式会社ラベルバンク) 2012年08月29日
8月3日に第12回の『食品表示一元化検討会』(以下、一元化検討会)が行われ、報告書の取りまとめが行われました。原料原産地表示のあり方については、一元化検討会での合意が得られず、結論は先送りとなったようです。加工食品の原料原産地については、2010年に出された「消費者基本計画」で表示義務の範囲を拡大させる方針を出していましたが、その後、実際に
表示義務の範囲を拡大の方法を議論した際に、現制度(品質表示基準)の下では表示拡大に一定の限界があるとし、今回の一元化検討会の議題に挙がっているという背景があります。昨今の原産地情報については事業者や消費者の関心が非常に強いため、今回はこちらを取り上げたいと思います。
もともと原料原産地表示の拡大は、「商品選択に資する」情報の観点で議論され、既定路線とする「推進側(主に消費者団体)」と、表示拡大に慎重または原料原産地表示の制度そのものに否定的な「慎重・否定側(主に事業者団体)」と意見が大きく二分されたまま、進行していきました。一元化検討会前半および意見交換会で出た2者の意見は以下の通りです。
◆推進側の意見
◆慎重・否定側の意見
推進側の意見としては「消費者が求めている情報だから」、慎重・否定側の意見としては「義務化することによって起こりうるマイナス面が大きい」という点が大きな理由になっているのがわかるかと思います。
消費者の「商品選択のため」の観点で進んでいた議論が行き詰まった頃、「誤認防止」という新たな観点も噴出しました。例えば、「○○ハンバーグ(○○は地名)」「丸鶏のカレー」など、原産地または原材料を強調して表示している場合、商品選択の基準として意味を持つことはもちろん、加工地と原料の原産地が同じであると誤認しやすいという問題があります。そこで、一元化検討会後半では、消費者庁の事務局から以下のような「たたき台案」が示されました。
(第8回一元化検討会資料「論点についての検討方向(たたき台案)」より抜粋)
原料原産地の誤認を防止する観点から、次の(1)の方式により、あるいはこれと併せて、又はこれに替えて、(2)の方式により、原料原産地の表示を義務付けることを検討してはどうか。(第10回一元化検討会資料 「新たな食品表示制度における加工食品の
原料原産地表示についての方向感(案)」より抜粋)
「誤認防止」という新しい観点によるたたき台案には、下記のメリットがあるとされています。
しかし、これに対する主な異論は下記のとおり。
義務付けの根拠として「誤認」という観点を入れるという考え方は、結局のところ消費者・事業者双方にとってわかりにくい個別方式に話を戻してしまう事になり、反対意見・疑問が相次いでコンセンサスを得られておりません。
次回では第12回の報告書(最新)の情報も加えながら、今後の原料原産地表示についてさらに深く掘り下げていきたいと思います。
※最新の情報は新たな加工食品の原料原産地表示制度に関する情報(消費者庁)をご覧ください。
株式会社ラベルバンク食品表示グループ 所属 。
東京農業大学 応用生物科学部 卒業。東北大学大学院 生命科学研究科 博士前期課程 修了。大学院修了後、株式会社ラベルバンクに入社。食品表示グループの実務担当者として、日々食品表示パッケージのチェックや食品表示作成代行に従事している。
<株式会社ラベルバンク>
「食品の品質情報は見せた方が得」「分かるから、安心」を企業メッセージに、「食品表示作成・チェックサービス」では、食品表示の知識を軸に、分かりやすく気配りのできる食品表示を、「プロモーションサービス」では商品が選ばれるための販促企画から仕組み作りまで、「食品開発支援サービス」ではおいしくて体にいい商品を、愛情こめて提供いたします。
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