食品表示コラム

食品表示制度一元化に問われる、食品表示のあり方(3)~食品の情報表示をどのように行うべきか (前編)

井上 慎也(株式会社ラベルバンク)  2012年03月29日

 消費者庁で執り行われている「食品表示一元化検討会(以下、一元化検討会)」は、2012年3月1日現在、第6回まで終了しており、第6回検討会では第1回から第5回までの中間報告がなされました。一元化検討会では、食品表示の「根幹」ともいえる「食品の情報表示をどのように行うべきか」についてまとめ、大まかに新しい食品表示案を挙げています。今回と次回は、この「食品の情報表示をどのように行うべきか」に関連する中間報告について説明していきたいと思います。

新たな食品表示制度の「目的」

 まず、現行の表示制度には、「JAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)」「食品衛生法」「健康増進法」関連など、複数の制度・複数のルールが存在することは前回お伝えしました。そして、それぞれの目的が異なることから、用語の定義や解釈も異なり、これが消費者だけでなく、実際に表示を作成する事業者にとっても混乱を生じさせる要因となっています。

<現行の表示制度の目的>

・品質表示基準・・・品質に関する適正な表示を確保することにより一般消費者の選択に資する
・食品衛生法関連表示規則・・・衛生上の危害の発生の防止を通じて国民の健康の保護を図る
・栄養表示基準 ・・・国民の健康の増進を通じた国民保健の向上を図る

これらの目的の異なる規則を一つに集約するにあたり、新しい制度ではあらためてすべてを包括する新たな「目的」の設定が必要となります。現在、新制度での目的趣旨としては、以下の4案が提示されています。

<新制度の目的案>

(1)「消費者の合理的な商品選択に資すること」(又は消費者に正確な情報を伝えること)に加え、「衛生上の危害の発生を防止(又は食品の安全性を確保)し、国民の健康の保護を図ること」「国民の健康の増進を図るための措置を通じ、国民保健の向上を図ること」「公正で自由な競争を促進すること」等を並列して目的に位置付けてはどうか。

(2)「食品の安全」「国民の健康の増進」等については商品選択時の要素の一つとして位置付け、「消費者の合理的な商品選択に資すること」(又は消費者に正確な情報を伝えること)を直接の目的としてはどうか。

(3)消費者に対し必要な情報が提供されること等を通じて、「消費者の自主的かつ合理的な選択の機会の確保」「消費者の安全の確保」など消費者基本法の理念が図られることを目的としてはどうか。

(4)JAS法、食品衛生法、健康増進法の三法の趣旨を踏まえた上で、最終的には「公衆衛生の向上を図ること」に重点を置いてはどうか。

 これら以外にも提案意見があり、最終的にどのようになるかはまだ明らかではありません。しかし、個人的には食品表示は消費者が本当に求めている商品を手にすることができるようにするためにあると思っているため、(2)や(3)のような消費者本位の目的のほうが良いのではと考えています。

食品表示をわかりにくくしている要因

 次に一元化検討会では、現在の表示制度をわかりにくくしている要因(特に「用語の統一とわかりやすい情報整理」)についても議論しており、以下の点を挙げています。

(1) 表示に用いる用語の定義および表示ルールが統一されていない

例えば、表示内容に関する制度である「品質表示基準」では、「表示を行った者」がその表示に対しての責任者となるため、下記のように記載することになっています。

食品を製造した事業者が表示を作成し販売 ・・・ 「製造者:株式会社○○」
食品の製造事業者と販売事業者が別 ・・・ 「販売者:株式会社△△」
海外食品を輸入販売を行った場合 ・・・ 「輸入者:株式会社□□」

 (小分け包装を再度行った場合は「販売者」「輸入者」ではなく、「加工者」となります。)

 これに対し、食品の衛生面に関する規則である「食品衛生法関連規則」では、あくまで製造した者にその食品に対する責任があるため、「製造者」(または「製造所」)を表示する必要があります。

 他にも制度によって「加工食品」と「生鮮食品」の線引きが違う(例えば、複数種類の魚からなる刺身の盛り合わせは「品質表示基準」では加工食品となる が、「食品衛生法関連規則」では生鮮食品(鮮魚介類)となる)など、表示ルールの運用方法や用語の定義そのものが異なっていることで、表示を行う事業者で 混乱が生じ、表示に不備があるものとして傍からみれば不必要ともいえる自主回収が発生する要因にもなっています。

(2) 情報が多すぎ、商品選択に必要な情報が見つけにくい

(3) 原材料名に付いている( )書きに複数の意味がある

こちらは主に消費者が抱えている不満点と言えるでしょう。「名称」から「販売者」までの一括表示に情報が集約され、表示がパンク寸前になっていること、また「添加物情報」「アレルギー情報」「遺伝子組換え情報」などが「原材料名」の欄に詰め込まれ、本当に欲しい情報が見つけにくい状況になっていることは第1回のコラムで紹介した通りです。

(4) 消費者に馴染みのない中間食品や添加物が記載されており、実際に役立つ情報になっていない 

例えば、「異性化糖」という表示を見て、なんとなく「糖分」の一種だというのはわかるかと思いますが、「異性化」という言葉がどういうものなのかすぐにわかる人は食品製造に携わっている方や理化学の専門教育を受けた方以外ではなかなかいないと思います。

(5) 文字が小さい

現在の表示規則では例外を除いてはJIS規格Z8305に規定する8ポイント(文字の縦の大きさ約2.8mm)以上で記載するように定められています。もちろんこれより大きく記載することは可能ですが、大きく記載している商品というのは少ないのが現状です。

わかりやすい表示とは

それでは、わかりやすい食品表示にするためにはどうすればよいのか。肥大化した食品情報を限られたスペースにどう整理するか、また現在制度化されているもの以外の食品表示ニーズにどう応えるかという相反する2要素を満たすのは難題ですが、こちらについては現在、次のようなことが提案されています。

(1) 表示事項に優先順位をつけることにより、容器包装に表示する文字数を調整する

平成14年度と平成20年度に行われた食品表示等に関する意識調査では、「食品を選ぶ際に重視している表示事項」および「重要だと考えている表示事項」のアンケートを行っています。これを元に表示事項の優先順位や表示する文字数に制限を付け、優先度の低い事項については任意で省略を可能にしてはどうかという提案です。

 個人的にはこれにより表示内容のスリム化が可能になり、「アレルギー情報」など、これまで他の情報に埋没していた健康な生活に関わる情報をクローズアップして確認できるようになることを期待しています。ただし、情報量が減ることになるため、これだけでは消費者に求められている食品表示ニーズを満たすことはできません。そこで次の(2)と(3)の提案が必要となります。

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(消費者の考える「重視する食品表示事項」)

(2) 容器包装以外への表示により情報を提供する

これにはインターネット、店頭ポップの活用、説明書の同封等が挙げられます。これまで製造者や販売者、小売店などが自主的に行っていたものもありますが、必要に応じて制度化するというものです。これにより、パッケージ表示だけでは表示しきれない情報を補完できますが、QRコードやインターネットなどは消費者の環境によって情報の格差が生まれることや、説明書同封の場合は購入後に確認することになるというデメリットもあります。

(3) 視覚的要素を活用する

 これには表・グラフの利用、マーク表 示、配色などが挙げられます。こちらもこれまで事業者が自主的にアレルギー情報を表やマークに表している例があり、大変わかりやすくなっているものもあり ます。ただ、情報のジャンルによっては向き不向きがあること、マークについては浸透するまでに時間がかかることなどに注意が必要です。

 次回はこの「わかりやすい表示」についての議論を踏まえたうえで、一元化検討会で提案された食品表示の方法イメージ像を紹介したいと思います。今回も拙筆にお付き合いいただき誠にありがとうございました。

執筆者プロフィール

井上 慎也(株式会社ラベルバンク) 

株式会社ラベルバンク食品表示グループ 所属 。
東京農業大学 応用生物科学部 卒業。東北大学大学院 生命科学研究科 博士前期課程 修了。大学院修了後、株式会社ラベルバンクに入社。食品表示グループの実務担当者として、日々食品表示パッケージのチェックや食品表示作成代行に従事している。

<株式会社ラベルバンク>
「食品の品質情報は見せた方が得」「分かるから、安心」を企業メッセージに、「食品表示作成・チェックサービス」では、食品表示の知識を軸に、分かりやすく気配りのできる食品表示を、「プロモーションサービス」では商品が選ばれるための販促企画から仕組み作りまで、「食品開発支援サービス」ではおいしくて体にいい商品を、愛情こめて提供いたします。

 

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