食の研究所

日本の朝食食品業界の次の狙いは朝の「欠食市場」 「ご飯か食パンか」の時代に別れを告げる

白田 茜(フリーランス記者)  2014年02月26日

今、朝食が脚光を浴びている。“世界一の朝食”として話題となった「bills(ビルズ)」など海外のパンケーキ店の日本進出も相次ぎ、有名店は行列待ちの人気ぶりだ。パンケーキの次はグラノーラの人気に火がつき、朝食ブームはまだまだ続きそうだ。外食産業も、朝食時間帯への新規参入や朝メニューの拡充に力を入れている。朝食ブームの背景を探ってみたい。

“朝活”を背景に活気づく朝食市場

朝食市場活況の背景にあるのが朝の時間を有効に活用する“朝活”ブームだ。“自分の時間”を夜から朝にシフトし、早朝からランニングや勉強、ミーティングなど充実した朝時間を過ごす人たちが増えている。早朝から営業する英会話スクールやフィットネスクラブなども増えた。

2009年4月には、出勤前に地域プロジェクトや農業、課題解決スキルなど幅広い知識を実践的に学ぶことができる「丸の内朝大学」がスタート。朝の朝食勉強会「EarlyBird(アーリーバード)」や「Before9プロジェクト」など様々な朝の勉強会が開催されている。

こうした朝活によく利用されるのがカフェだ。夜に開催される異業種交流会では食事や会場代などで数千円から1万円かかることもあり、参加するハードルが高い。だが、朝食会はコーヒー1杯程度の負担で気軽に参加できる。

ファミリーレストランやカフェチェーン、ファストフード、駅構内にある“エキナカ”レストランなども、こぞって朝食専用メニューを強化している。朝ごはんを外で食べる人たちは「ソトアサ族」と呼ばれるようになった。食品メーカーでも朝の時間帯に合わせた商品が次々と開発されている。

日本人の起床時間も早くなってきている。総務省の「社会生活基本調査」によれば、日本人の平均起床時刻は2001年が6時42分だった。2006年には6時39分となり、2011年には6時37分になっている。日本人の“朝型化”が進んでいるように思える。

パンケーキ店でちょっと贅沢な朝食

今や全国的にブームとなっているパンケーキ。火付け役になったのは、鎌倉市七里ガ浜に2008年3月オープンした「bills」。オーストラリアのシドニー発祥のレストランだ。「世界一の朝食」という触れ込みで一躍有名になった。いまだに週末は行列という人気ぶりだ。横浜や東京にも店舗を次々と出店している。

2010年頃から、原宿界隈にパンケーキ店が相次いでオープンしている。原宿・表参道界隈はさながらパンケーキの激戦区になっている。

2010年に「Eggs’nThings(エッグスンシングス)」、2012年に「CaféKaila(カフェ・カイラ)」、2013年には「Cinnamon'sRestaurant(シナモンズレストラン)」がオープン。この3店はいずれもハワイ発のパンケーキカフェだ。2013年にはニューヨーク発の「CLINTONST.BAKING(クリントン・ストリート・ベーキング)」の世界2店舗目も表参道に出店。国内からも2012年に神奈川県逗子発の「SUNDAYJAMharajuku(サンデージャム原宿)」がオープンした。

これらの店はどこも連日行列の人気ぶりだ。出店でパンケーキブランドが街に根付き、ますます人を呼ぶという相乗効果を生み出している。

価格帯は1500円から2000円程度と決して安くはない。しかし、パンケーキの人気から「いつもよりちょっと贅沢な朝食を楽しむ」という非日常感を味わうことが1つのトレンドになってきているように思える。

“ソトアサ族”を支える飲食店サービス

外で朝食を食べる習慣がなかった頃、いち早く朝食メニューを出していたのが「日本マクドナルド」だ。同社が朝食メニュー「朝マック」を始めたのが1985年。マフィンやホットケーキなど、朝食に適した軽めのメニューが人気となった。

2013年1月には、「朝マック」を強化すると発表。300円の新しい低料金セットメニューを発売するほか、従来の朝食セットを値下げした。ほかのファストフード店でも、「ロッテリア」や「バーガーキング」などが次々に朝食メニューを提供してきた。

ファミリーレストランは、1990年代後半頃から朝食市場にてこ入れしてきた。いち早く朝食メニューを提供してきたのが「デニーズ」だ。以降、「すかいらーく」「ガスト」「ジョナサン」などが相次ぎ朝食市場に参入してきた。

カフェでは「スターバックスコーヒージャパン」が2007年9月に朝食向きメニューを大幅に拡充。「スターバックスコーヒーで始まるアクティブな一日」をコンセプトに、「ゆとりのある気持ちいい朝」(同社ホームページ)を提案していくという。

ファストフードやファミレス以外にも、ソトアサ族に欠かせない存在になりつつあるのが、“エキナカ”だ。JRの首都圏エキナカでレストランを展開するジェイアール東日本フードビジネスは、「ベックスコーヒーショップ」や「カフェデンマルク」など2012年末時点で237店舗を運営している。中でも回転寿司チェーン「うず潮」ではおかずを選べる「回転朝食」を導入。朝食をさっと済ませたい食べたいビシネスマンの集客を狙う。

外食産業が朝食に力を入れている背景には、前述の朝活ブームのほかにも、少子高齢化が進み、外食産業の市場規模が縮小し続けていることがあると考えられる。夜の飲食の需要が減り、朝の時間帯での新たな集客を狙っているのだ。

もちろん、飲食店にとって朝食市場の開拓は容易ではない。しかし、朝食では繰り返し利用する固定客が多いという。早朝は散歩帰りの高齢者、出勤前のサラリーマン、子供を送り出した後の母親など様々な客の需要があり、固定客のリピートが見込まれるのだ。

執筆者プロフィール

白田 茜(フリーランス記者) 

白田 茜(しろた あかね) 1978年佐賀県生まれ。 佐賀県庁で食品のブランド化に関わる。その後、大学院で農業政策や食品安全に関するリスクコミュニケーションを学ぶ。
食品コンサルタント会社を経て、現在は社会的関心が高い科学ニュースについて専門家のコメントを収集しジャーナリストに提供する活動をしている。関心のあるテーマは、農業、食品流通、食品安全、リスクコミュニケーション。

<記事提供:食の研究所
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